MSX(エム・エス・エックス)とは、米マイクロソフトとアスキー(後のアスキー・メディアワークス)によって提唱された8ビット・16ビットのパソコンの共通規格の名称である。1983年に最初の規格であるMSX(通称「MSX1」)が提唱され、1985年にはMSX2、1988年にはMSX2+、1990年にはMSXturboRが提唱された。MSXはこれらの総称でもある。 元々は、アスキー・マイクロソフト側がメーカー独自のハードウェアに合わせたマイクロソフトBASICをカスタマイズする形で移植していたが、この方法ではメーカー並びに機種単位の互換性がないという欠点があったため、共通規格としてMSXが誕生した。 MSXは欧州でも展開されていたものの、序盤からテクニカルサポート体制の不備が指摘されるなど、海外進出を念頭に置いた戦略が十分ではなく、一部正規品の互換性問題などで苦戦を強いられていた。 1985年にはMSX1の後継規格・MSX2が誕生し、ヨーロッパのほか、共産圏や南米にも進出したが、まもなくプラザ合意による円高によって他の輸出産業とともに窮地に立たされる。同時期、アスキーとマイクロソフトの対立が激化し、翌年1986年2月に両社の提携が解消されたほか、アスキーの上層部の間でもMSXの扱いで対立が起きていた。その結果、MSXはヨーロッパ市場からの撤退を余儀なくされた。