稲荷神(いなりのかみ、いなりしん)は、稲を象徴する穀霊神・農耕神。稲荷大明神(いなりだいみょうじん)、お稲荷様、お稲荷さんともいう。五穀をつかさどる御食津神・ウカノミタマと稲荷神が同一視されることから、総本宮の伏見稲荷大社を含め、多くの稲荷神社ではウカノミタマを主祭神としている。 本来は穀物・農業の神だが、現在は商工業を含め産業全体の神とされ、日本で最も広範に信仰されている神の一つである。稲荷神は神仏習合思想において仏教の女神である荼枳尼天とも習合したため、仏教寺院で祀られることもある。 もとは古代社会において、「渡来人であった秦氏の氏神的稲荷信仰をもとに、秦氏の勢力拡大に伴って伏見稲荷の信仰圏も拡大されていった」と『日本民俗大辞典』は述べている。本来の「田の神」の祭場は狐塚(キツネを神として祀った塚・キツネの棲家の穴)だったと推測されるが、近世には京都の伏見稲荷を中心とする稲荷信仰が広まり、狐塚に稲荷が祀られるようになった。