線型代数学における対称行列(たいしょうぎょうれつ、英: symmetric matrix)は、自身の転置行列と一致するような正方行列を言う。記号で書けば、行列 A は を満たすとき対称であるという。任意の正方行列は対称行列と相似である。 定義により、対称行列の成分は主対角線に関して対称である。即ち、成分に関して行列 A = [ai j] は任意の添字 i j に関して ai j = aj i を満たす。例えば、次の 3 次正方行列 は対称である。任意の正方対角行列は、その非対角成分が 0 であるから、対称である。同様に、歪対称行列(tA = −A なる行列)の各対角成分は、自身と符号を変えたものと等しいから、すべて 0 でなければならない。 実対称行列が実内積空間上の適当な正規直交基底に対して定める線形作用素は対称作用素(自己随伴作用素)である。複素内積空間の場合に対応する概念は、複素数を成分に持つエルミート行列(自身の共役転置行列と一致するような複素行列)である。故に、複素数体上の線型代数学においては、対称行列という言葉は行列が実数に成分をとる場合に限って使うことがしばしばある。対称行列は様々な応用の場面に現れ、典型的な数値線型代数ソフトウェアではこれらに特別な便宜をさいている。