う蝕(齲蝕、うしょく)とは、歯の実質欠損のなかで、生物的要因(口腔内の細菌が糖質から作った酸による歯の脱灰など)が原因であるものである。そのほかの物理的要因(磨耗、たわみなど)、化学的要因(細菌由来ではない酸など)による歯の実質欠損は、う蝕には入らない。疾病負荷の観点から歯周病と並び、歯科の二大疾患の一つである。また、一度う蝕を治療した歯に、再度う蝕ができた場合、二次う蝕と呼ぶ。 う蝕を有する歯を、う歯(一般的には虫歯、むし歯)、う蝕が進行して歯に穴ができていることが目に見えてわかる状態になった場合、その穴をう窩と呼ぶ。 う蝕は世界で最も多い疾患のひとつであり、2019年には医学雑誌Lancetで口腔保健の特集号が組まれた。そこでは、34%の人に未治療のう蝕があることが強調されている。日本ではう蝕が減少したことが良く知られているが、成人・高齢者においては未治療のう蝕を有する人は3割を超えており、またう蝕経験者は9割を大きく越える。成人のう蝕には、二次う蝕も多くみられる。1970年代から減少をしている子どものう蝕でも、学校保健統計調査で他の疾患と比べてみると、ほとんどの年齢で最も多いのがう蝕である(年齢によって近視が多いが、近視による医療受診は少ないことを考えると、う蝕の重要性は子どもにおいても無視はできない)。

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  • う蝕(齲蝕、うしょく)とは、歯の実質欠損のなかで、生物的要因(口腔内の細菌が糖質から作った酸による歯の脱灰など)が原因であるものである。そのほかの物理的要因(磨耗、たわみなど)、化学的要因(細菌由来ではない酸など)による歯の実質欠損は、う蝕には入らない。疾病負荷の観点から歯周病と並び、歯科の二大疾患の一つである。また、一度う蝕を治療した歯に、再度う蝕ができた場合、二次う蝕と呼ぶ。 う蝕を有する歯を、う歯(一般的には虫歯、むし歯)、う蝕が進行して歯に穴ができていることが目に見えてわかる状態になった場合、その穴をう窩と呼ぶ。 う蝕は世界で最も多い疾患のひとつであり、2019年には医学雑誌Lancetで口腔保健の特集号が組まれた。そこでは、34%の人に未治療のう蝕があることが強調されている。日本ではう蝕が減少したことが良く知られているが、成人・高齢者においては未治療のう蝕を有する人は3割を超えており、またう蝕経験者は9割を大きく越える。成人のう蝕には、二次う蝕も多くみられる。1970年代から減少をしている子どものう蝕でも、学校保健統計調査で他の疾患と比べてみると、ほとんどの年齢で最も多いのがう蝕である(年齢によって近視が多いが、近視による医療受診は少ないことを考えると、う蝕の重要性は子どもにおいても無視はできない)。 また高齢者の歯の残存により、高齢者でう蝕を有する人は増加している。そのため人口高齢化もあいまって、高齢者の歯科受診は増加している。 う蝕の予防は歯垢の完全除去と糖分摂取の厳密な管理によって成し遂げられるため、これを知る教育が重要であるとされている。しかし、極めて有病率が高いう蝕は、教育だけで十分に防ぐことは難しい。貧困や障害などにより知識を有していても行動が難しい人も数多く存在する。そのため、フッ化物やシーラントなど、エビデンスの検証された予防方法を用いる必要がある。 う蝕の進行度の低いエナメル質の白斑は経過観察される。う蝕の進行に伴って削る必要が出てくるが、感染した象牙質にとどめるなど最小限になされる。状況に応じて補修(詰め物)される。リスクを高めることが判明している糖類とは、米などに含まれるデンプンではなく、砂糖など単糖類・二糖類である。これらによって口腔内の菌が酸をつくり歯が溶解していくことになるが、アルカリ性である唾液とその成分のカルシウムがそれを回復させる再石灰化が起こる。この均衡が崩れると、再石灰化できない(不可逆性の)う蝕となる。 特に歯の萌出後の数年は石灰化度が低いため虫歯になりやすく、歯冠う蝕は未成年に多く見られる。一方、高齢化と残存歯の増加に伴い、高齢者の根面う蝕が増加してきた。 2002年には国際歯科連盟(FDI)によって、(MI、最小の介入)が提唱され、今日の日本の診療ガイドラインでもこの概念が重要視されている。 (ja)
  • う蝕(齲蝕、うしょく)とは、歯の実質欠損のなかで、生物的要因(口腔内の細菌が糖質から作った酸による歯の脱灰など)が原因であるものである。そのほかの物理的要因(磨耗、たわみなど)、化学的要因(細菌由来ではない酸など)による歯の実質欠損は、う蝕には入らない。疾病負荷の観点から歯周病と並び、歯科の二大疾患の一つである。また、一度う蝕を治療した歯に、再度う蝕ができた場合、二次う蝕と呼ぶ。 う蝕を有する歯を、う歯(一般的には虫歯、むし歯)、う蝕が進行して歯に穴ができていることが目に見えてわかる状態になった場合、その穴をう窩と呼ぶ。 う蝕は世界で最も多い疾患のひとつであり、2019年には医学雑誌Lancetで口腔保健の特集号が組まれた。そこでは、34%の人に未治療のう蝕があることが強調されている。日本ではう蝕が減少したことが良く知られているが、成人・高齢者においては未治療のう蝕を有する人は3割を超えており、またう蝕経験者は9割を大きく越える。成人のう蝕には、二次う蝕も多くみられる。1970年代から減少をしている子どものう蝕でも、学校保健統計調査で他の疾患と比べてみると、ほとんどの年齢で最も多いのがう蝕である(年齢によって近視が多いが、近視による医療受診は少ないことを考えると、う蝕の重要性は子どもにおいても無視はできない)。 また高齢者の歯の残存により、高齢者でう蝕を有する人は増加している。そのため人口高齢化もあいまって、高齢者の歯科受診は増加している。 う蝕の予防は歯垢の完全除去と糖分摂取の厳密な管理によって成し遂げられるため、これを知る教育が重要であるとされている。しかし、極めて有病率が高いう蝕は、教育だけで十分に防ぐことは難しい。貧困や障害などにより知識を有していても行動が難しい人も数多く存在する。そのため、フッ化物やシーラントなど、エビデンスの検証された予防方法を用いる必要がある。 う蝕の進行度の低いエナメル質の白斑は経過観察される。う蝕の進行に伴って削る必要が出てくるが、感染した象牙質にとどめるなど最小限になされる。状況に応じて補修(詰め物)される。リスクを高めることが判明している糖類とは、米などに含まれるデンプンではなく、砂糖など単糖類・二糖類である。これらによって口腔内の菌が酸をつくり歯が溶解していくことになるが、アルカリ性である唾液とその成分のカルシウムがそれを回復させる再石灰化が起こる。この均衡が崩れると、再石灰化できない(不可逆性の)う蝕となる。 特に歯の萌出後の数年は石灰化度が低いため虫歯になりやすく、歯冠う蝕は未成年に多く見られる。一方、高齢化と残存歯の増加に伴い、高齢者の根面う蝕が増加してきた。 2002年には国際歯科連盟(FDI)によって、(MI、最小の介入)が提唱され、今日の日本の診療ガイドラインでもこの概念が重要視されている。 (ja)
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  • 右:う蝕が歯髄に達し、歯根の先端が病変となっている (ja)
  • 左:上部にう蝕が発生した歯の断面のモデル。 (ja)
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  • う蝕(齲蝕、うしょく)とは、歯の実質欠損のなかで、生物的要因(口腔内の細菌が糖質から作った酸による歯の脱灰など)が原因であるものである。そのほかの物理的要因(磨耗、たわみなど)、化学的要因(細菌由来ではない酸など)による歯の実質欠損は、う蝕には入らない。疾病負荷の観点から歯周病と並び、歯科の二大疾患の一つである。また、一度う蝕を治療した歯に、再度う蝕ができた場合、二次う蝕と呼ぶ。 う蝕を有する歯を、う歯(一般的には虫歯、むし歯)、う蝕が進行して歯に穴ができていることが目に見えてわかる状態になった場合、その穴をう窩と呼ぶ。 う蝕は世界で最も多い疾患のひとつであり、2019年には医学雑誌Lancetで口腔保健の特集号が組まれた。そこでは、34%の人に未治療のう蝕があることが強調されている。日本ではう蝕が減少したことが良く知られているが、成人・高齢者においては未治療のう蝕を有する人は3割を超えており、またう蝕経験者は9割を大きく越える。成人のう蝕には、二次う蝕も多くみられる。1970年代から減少をしている子どものう蝕でも、学校保健統計調査で他の疾患と比べてみると、ほとんどの年齢で最も多いのがう蝕である(年齢によって近視が多いが、近視による医療受診は少ないことを考えると、う蝕の重要性は子どもにおいても無視はできない)。 (ja)
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