心的外傷後ストレス障害(しんてきがいしょうごストレスしょうがい、post-traumatic stress disorder、PTSD)は、命の安全が脅かされるような出来事(戦争、天災、事故、犯罪、虐待など)によって強い精神的衝撃を受けることが原因で、著しい苦痛や、生活機能の障害をもたらしているストレス障害である。症状がまだ1か月を経ていないものは急性ストレス障害として区別する。 心的外傷(トラウマ)には事故・災害時の急性トラウマと、児童虐待など繰り返し加害される慢性のトラウマがある。しかし、基本的にPTSDは戦争帰還兵の研究から生まれた診断なので、児童虐待のトラウマに診断基準が対応していないという批判が強かった。そのため、疾病及び関連保健問題の国際統計分類(ICD)の第11版(2019年改訂)では慢性トラウマを分離し複雑性PTSDの概念を導入することとなった。 治療では、精神療法においては認知行動療法やEMDR、ストレス管理法などが有効である(「」を参照)。成人のPTSDにおける薬物療法はSSRI系の抗うつ薬が有効であるが、中等度以上のうつ病が併存しているか、精神療法が成果を上げないあるいは利用できない場合の選択肢である。日本および国際的なガイドラインにおいて、ベンゾジアゼピン系の薬剤の効果は疑問視されている。