マラリアの歴史は、アフリカにおける霊長類の人獣共通感染症としての起源を持ち、時代的には先史時代から21世紀にまで及んでいる。マラリアは命を落とす危険性もあるヒトの感染症であり、そのピーク時には南極大陸を除くすべての大陸で蔓延していた病気であった。マラリアの予防と治療は、数百年もの間、科学と医学の研究対象となってきた。マラリアを引き起こす寄生虫(マラリア原虫)の発見以降、寄生虫とそれを媒介するカ(蚊)の生物学に研究の焦点は絞られている。 マラリアを研究した学者はその業績によって複数のノーベル賞を獲得したが、未だ毎年2億人がマラリアに苦しみ、60万人以上が死亡している。 マラリアは第二次世界大戦中にアメリカ軍が蒙った最も重大な健康被害であり、約50万人の男性がマラリアに感染した。ジョセフ・パトリック・バーンによると、アフリカや南太平洋での作戦中に、6万人のアメリカ軍兵士がマラリアのために命を落とした。 20世紀末の段階でも、マラリアは中央・南アメリカ、イスパニョーラ島(ハイチとドミニカ共和国)、アフリカ、中東、インド亜大陸、東南アジア、オセアニアの大部分の地域を含んだ、熱帯や亜熱帯にあたる100以上の国で未だに流行することがある。マラリア原虫が抗マラリア薬や殺虫剤へ耐性を持ったり、寄生虫が新たな宿主を発見するために、防除の手段は複雑なものとなってきている。