『のんきな患者』(のんきなかんじゃ)は、梶井基次郎の短編小説。全3章から成る。重苦しい結核の症状で病床生活を送る主人公が、母親とのユーモラスな会話や、同じ病で死んだ者やその家族など、下町庶民の暮らしぶりを回想交じりに綴った物語。貧しいゆえに迷信に縋って病気と闘うしかない人々の健気な姿を通じ、社会的なものへと視野を拡げていく志向が見られ、それまでの心象を描く散文詩的な文体とは異なり、客観的な本格小説への移行が示された作品である。同人誌でなく、初めて中央文壇の文芸雑誌に寄稿し原稿料を得た作品であるが、梶井がこの作品を擱筆した約3か月後に死去したため、公に発表した最後の小説となった。