本項では、通信社の歴史(つうしんしゃのれきし)を概観する。 国家を代表する通信社の栄枯盛衰は往々にして、その社が属する国家のそれと軌を一にしている。即ち、国家の勢力圏の拡大は通信社の販路の拡大に直結するものであり、通信社の配信する記事の増大は国家の発言力の増大を意味する。国営通信社にその傾向が顕著であることはもちろんであるが、その他の通信社も、多かれ少なかれ同様の性格を帯びている。フランスのアヴァスや日本の同盟通信社は、国家の降伏直後に解散。対してアメリカのAPは、第一次世界大戦後の国家の隆盛と歩調を合わせて伸長し、世界最大の通信社として躍り出た。 通信社はその業務の性格上、膨大な資金力を必要とする。殊に営利組織の場合、一般ニュースの配信のみで経営を維持するのは困難であり、資力に乏しい社は次々と淘汰された。それは、熾烈な競争を勝ち残ってきたロイターについても同様である。かつて栄華を誇った同社の一般ニュース部門は、1960年代には不採算部門の烙印を押され、一時は売却すら検討された。対して経済通信部門は隆盛を極め、同社の売り上げの大半を占めるまでに成長した。ロイターの事業規模は、一般ニュース部門ではAPの後塵を拝しているものの、社全体ではAPのおよそ10倍に達している。今や、経済・金融情報分野の勢力図に目を向けることなくしては、この業界の全貌を知ることはできなくなっている。