米騒動(こめそうどう)は食糧騒擾(農牧産物の消費者の騒擾)の一種である。ヨーロッパでは食肉暴動などもあるが、一般に穀物・パン・麦粉など穀物関係の騒擾が最も多い。必需品である上に保存が効くため、買い占めて値を吊り上げるのに格好だからである。したがって米食が基本の東アジア・モンスーン地帯では米騒動が主で、日本はその典型である。 商人の存在は都市の発生と共に古く、農畜産物を商品化する階級を掣肘する政治勢力が無い場合、食糧価格が上がるため、食糧騒擾は古代から存在した。殊に地中海世界は夏季の雨量が少ないため穀作に適せず、葡萄酒や陶磁器などの商工生産物の貿易によって黒海方面などから穀物を輸入する都市文明として栄えたが、遠路の輸入経路に乱れが生じた際に、支配的な商工階級が穀価を吊り上げるのを抑える政治勢力がいなかった。ギリシャ(殊にアテネ)やローマはその典型であったが、中世末のイタリア北半や近世初頭のフランドルもそうであった。毛織物業で栄え商工業者が支配する都市国家で穀物を輸入に依存していたからである。これらの都市国家の例を別にすれば、食糧騒擾は一般に、王権の衰える封建制末期に始まり、市民革命の前後に多い。ブルジョワジーが支配的になっているが、まだ第一次産業が中心なので投機の主要な対象が穀物になるためである。