トリクロロエチレン (trichloroethylene) は有機塩素化合物の一種である。エチレンの水素原子のうち3つが塩素原子に置き換わったもの。洗浄剤として使われたが、発がん性があることが明らかとなった。常温では無色透明の液体で、不燃性である。揮発性があり、甘い香りを持つ。 脱脂力が大きいため、半導体産業での洗浄用やクリーニング剤として1980年代頃までは広く用いられていた。しかし発癌性が指摘され、代替物質への移行が行われている。 土壌汚染や地下水汚染を引き起こす原因ともなるため、各国で水質汚濁並びに土壌汚染に係る環境基準が定められている。日本では化学物質審査規制法により、1989年に第二種特定化学物質に指定された。国際がん研究機関の発がん性評価ではグループ 1 の「ヒトに対する発癌性が認められる」物質として規定されている。このがんリスクにより、労働安全衛生法の第二類物質特別有機溶剤等にも指定されている。 工業的な合成法とされていたのは、銅などの触媒のもと、1,2-ジクロロエタンに塩素、または塩素と酸素を作用させる方法であった。