皇国地誌(こうこくちし)は、明治初期の未完に終わった官撰地誌編纂事業。刊行されなかったが、残存する原稿や控えは「皇国地誌残稿」「郡村誌」(ぐんそんし)と呼ばれ、貴重な史料となっている。 明治新政府は国土把握には史誌地誌編纂が必要と考え、奈良時代の風土記に倣った官撰地誌編纂を計画し太政官正院地誌課を新設した。さらに各府県へ所属郡内すべての村について、詳細な調査報告書の提出を命じた。編纂には内務省地理寮(国土地理院の前身)があてられた。 1872年(明治5年)頃から始められたが難航、紆余曲折ののち1884年(明治17年)に打ち切られ、大日本国誌編纂事業に引き継がれたが、これも安房国1冊の刊行に留まっている。残稿は東京帝国大学に所蔵されていたが、関東大震災により大半が焼失してしまった。