分福茶釜(ぶんぶくちゃがま、ぶんぷくちゃがま)は、日本中で語り継がれている、タヌキ(あるいはキツネ)が化けた茶釜の昔話(民話)、あるいはおとぎ話、童話。文福茶釜とも表記する。 概説 おとぎ話では、和尚が手放した茶釜(狸の化身で、頭・足・尻尾が生える)が、綱渡りなどの芸をし、これを見世物商売に屑屋が財を築き、茶釜を元の寺(茂林寺)に返還する。 茂林寺は群馬県館林市に実在する寺で、現在も文福茶釜を所蔵する。ただし寺の縁起は、狸の化けた釜とはせず、古狸(貉)の老僧愛用の「福を分ける」分福茶釜であるとする。千人の僧が集まる法会で茶をたてたが、一昼夜汲み続けても釜の湯はなくならなかったと記される。 狸や狐が茶釜に変化(へんげ)する昔話(民話)は、全国に分布する。人間に恩あるか言いくるめられて茶釜に化け、寺の和尚などに売りつけられるが正体が発覚する、という粗筋の類話群である。狸が芸をする要素(モチーフ)は民話例に少ない。民俗学・民話研究では、狐の恩返し系の動物の報恩譚が原形とされ、よって関敬吾『』の分類である「文福茶釜」(238B型)と、「」型、「」型は、大まかに分類すれば同種とみなされている。 江戸時代の赤本では、また違った粗筋の滑稽話になっている。