『盗賊』(とうぞく)は、三島由紀夫の最初の長編小説。全6章から成る。恋する相手に捨てられ傷つき、自殺を決心した男と女が出会う物語。失恋の苦悩と、新たな出会いから互いの胸の中の幻影を育て合う悲劇的な結末までを、人工的で精緻微妙なタッチで描いたロマネスクな心理小説である。文体や箴言の多用などにレイモン・ラディゲの『ドルジェル伯の舞踏会』の影響がみられる作品である。東京帝国大学法学部在学中から大蔵省在職時代にかけて書かれたもので、三島自身が「第四の処女作」「長篇の処女作」と呼んでいる作品である。