『読書するマグダラのマリア』(どくしょするマグダラのマリア(蘭: Maria Magdalena leest、英: The Magdalen Reading)は、初期フランドル派の画家ロヒール・ファン・デル・ウェイデンが15世紀に描いた絵画。オリジナルはオーク板に油彩で描かれた板絵で、もともとはより大きな祭壇画だったが、後にその祭壇画が複数枚に裁断されてしまったものである。この『読書するマグダラのマリア』は、その裁断された祭壇画の現存する断片の三枚のうちの一つで、1860年以来ロンドンのナショナル・ギャラリーが所蔵している。正確な制作年度は不明だが、1435年から1438年ごろに完成を見たのではないかと考えられている。 ファン・デル・ウェイデンは生前には非常に成功した画家であったが、17世紀になるころにはその名前は忘れ去られてしまっており、作品と影響が再評価されたのは19世紀初頭になってからのことだった。『読書するマグダラのマリア』に残る最初の来歴は1811年の即売会のものである。その後オランダで多くの画商を経て、1860年にパリのコレクターからロンドンのナショナル・ギャラリーが買い取った。この作品について美術史家ローン・キャンベルは「15世紀美術でもっとも優れた傑作の一つであり、ファン・デル・ウェイデンの初期作品としてはもっとも重要な絵画である」としている。

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  • 『読書するマグダラのマリア』(どくしょするマグダラのマリア(蘭: Maria Magdalena leest、英: The Magdalen Reading)は、初期フランドル派の画家ロヒール・ファン・デル・ウェイデンが15世紀に描いた絵画。オリジナルはオーク板に油彩で描かれた板絵で、もともとはより大きな祭壇画だったが、後にその祭壇画が複数枚に裁断されてしまったものである。この『読書するマグダラのマリア』は、その裁断された祭壇画の現存する断片の三枚のうちの一つで、1860年以来ロンドンのナショナル・ギャラリーが所蔵している。正確な制作年度は不明だが、1435年から1438年ごろに完成を見たのではないかと考えられている。 透き通るような肌、高い頬骨、楕円の目をもつ、当時の絵画作品の典型ともいえる理想化された上流階級の女性が描かれた作品である。描かれている女性は聖女マグダラのマリア(以下単なる「マリア」は「マグダラのマリア」を指す)とされており、その根拠として伝統的なキリスト教芸術でマリアを意味する香油壷が画面前面の床に描かれていることがあげられる。この作品ではマリアは読書に没頭しており、過去の罪業を悔悛し赦された観想的な生活を送る人物として表現されている。カトリックの伝統的教義ではマグダラのマリアはイエスの足に香油を注いだベタニアのマリア、ならびに罪の女 と同一視されている。図像学ではマグダラのマリアは本とともに描かれ、沈思しているその様子は涙にくれているか、あるいは目を背けて描かれることが多いとされている。ファン・デル・ウェイデンは、マリアの衣服のしわや質感、マリアの後方に立つ人物が持つロザリオの水晶、室内の様子など、細部にわたる非常に精緻な描写でこの作品を仕上げている。 『読書するマグダラのマリア』の背景は、長い間オリジナルの状態から暗色一色で厚く塗りつぶされてしまっていた。しかしながら1955年から1956年にかけて作品の洗浄が行われ、描かれていたマリアの後ろに立つ男性と裸足でひざまずく女性、そして窓越しの外の風景が元通りに修復された。背景に描かれている二人の人物像が一部しか残っていないのは、『読書するマグダラのマリア』がオリジナルの祭壇画から切断された作品であるためである。リスボンのカルースト・グルベンキアン美術館 (en:Museu Calouste Gulbenkian) には聖ヨセフの頭部が描かれているとされる『聖ヨセフの頭部』と聖カタリナを描いたとされる『聖女の頭部』と呼ばれる『読書するマグダラのマリア』の3分の1程度の大きさの2点の板絵が所蔵されており、この2点の板絵がオリジナルの祭壇画から切断された断片の一部ではないかと考えられている。オリジナルの祭壇画は聖会話を描いたもので、ストックホルムの国立美術館に、オリジナルの祭壇画から聖母子と聖者たちが描かれた部分を模写した1500年代終わりごろのドローイングが所蔵されている。このドローイングから『読書するマグダラのマリア』は、オリジナルの祭壇画の右側部分であったことが判明した。 ファン・デル・ウェイデンは生前には非常に成功した画家であったが、17世紀になるころにはその名前は忘れ去られてしまっており、作品と影響が再評価されたのは19世紀初頭になってからのことだった。『読書するマグダラのマリア』に残る最初の来歴は1811年の即売会のものである。その後オランダで多くの画商を経て、1860年にパリのコレクターからロンドンのナショナル・ギャラリーが買い取った。この作品について美術史家ローン・キャンベルは「15世紀美術でもっとも優れた傑作の一つであり、ファン・デル・ウェイデンの初期作品としてはもっとも重要な絵画である」としている。 (ja)
  • 『読書するマグダラのマリア』(どくしょするマグダラのマリア(蘭: Maria Magdalena leest、英: The Magdalen Reading)は、初期フランドル派の画家ロヒール・ファン・デル・ウェイデンが15世紀に描いた絵画。オリジナルはオーク板に油彩で描かれた板絵で、もともとはより大きな祭壇画だったが、後にその祭壇画が複数枚に裁断されてしまったものである。この『読書するマグダラのマリア』は、その裁断された祭壇画の現存する断片の三枚のうちの一つで、1860年以来ロンドンのナショナル・ギャラリーが所蔵している。正確な制作年度は不明だが、1435年から1438年ごろに完成を見たのではないかと考えられている。 透き通るような肌、高い頬骨、楕円の目をもつ、当時の絵画作品の典型ともいえる理想化された上流階級の女性が描かれた作品である。描かれている女性は聖女マグダラのマリア(以下単なる「マリア」は「マグダラのマリア」を指す)とされており、その根拠として伝統的なキリスト教芸術でマリアを意味する香油壷が画面前面の床に描かれていることがあげられる。この作品ではマリアは読書に没頭しており、過去の罪業を悔悛し赦された観想的な生活を送る人物として表現されている。カトリックの伝統的教義ではマグダラのマリアはイエスの足に香油を注いだベタニアのマリア、ならびに罪の女 と同一視されている。図像学ではマグダラのマリアは本とともに描かれ、沈思しているその様子は涙にくれているか、あるいは目を背けて描かれることが多いとされている。ファン・デル・ウェイデンは、マリアの衣服のしわや質感、マリアの後方に立つ人物が持つロザリオの水晶、室内の様子など、細部にわたる非常に精緻な描写でこの作品を仕上げている。 『読書するマグダラのマリア』の背景は、長い間オリジナルの状態から暗色一色で厚く塗りつぶされてしまっていた。しかしながら1955年から1956年にかけて作品の洗浄が行われ、描かれていたマリアの後ろに立つ男性と裸足でひざまずく女性、そして窓越しの外の風景が元通りに修復された。背景に描かれている二人の人物像が一部しか残っていないのは、『読書するマグダラのマリア』がオリジナルの祭壇画から切断された作品であるためである。リスボンのカルースト・グルベンキアン美術館 (en:Museu Calouste Gulbenkian) には聖ヨセフの頭部が描かれているとされる『聖ヨセフの頭部』と聖カタリナを描いたとされる『聖女の頭部』と呼ばれる『読書するマグダラのマリア』の3分の1程度の大きさの2点の板絵が所蔵されており、この2点の板絵がオリジナルの祭壇画から切断された断片の一部ではないかと考えられている。オリジナルの祭壇画は聖会話を描いたもので、ストックホルムの国立美術館に、オリジナルの祭壇画から聖母子と聖者たちが描かれた部分を模写した1500年代終わりごろのドローイングが所蔵されている。このドローイングから『読書するマグダラのマリア』は、オリジナルの祭壇画の右側部分であったことが判明した。 ファン・デル・ウェイデンは生前には非常に成功した画家であったが、17世紀になるころにはその名前は忘れ去られてしまっており、作品と影響が再評価されたのは19世紀初頭になってからのことだった。『読書するマグダラのマリア』に残る最初の来歴は1811年の即売会のものである。その後オランダで多くの画商を経て、1860年にパリのコレクターからロンドンのナショナル・ギャラリーが買い取った。この作品について美術史家ローン・キャンベルは「15世紀美術でもっとも優れた傑作の一つであり、ファン・デル・ウェイデンの初期作品としてはもっとも重要な絵画である」としている。 (ja)
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