名目的取締役(めいもくてきとりしまりやく)とは、適法な選任手続きを経て取締役に就任しているが、当該会社との間で取締役としての職務を果たさなくてもよいとの合意があるなど、実際には取締役としての職務を行っていない者を指す法理論上の概念である。取締役の員数を揃えるため、あるいは社会的地位のある人物を取締役とすることで会社の信用を高める目的で置かれることが多い。日本では、2005年(平成17年)改正前商法(以下、「旧商法」とする)において、株式会社には最低3名の取締役を置くことが必要であったことから、特に中小企業において多く見られた。 名目取締役(めいもくとりしまりやく)、名目上の取締役(めいもくじょうのとりしまりやく)ともいう。監査役の場合は名目的監査役(めいもくてきかんさやく)という。 名目的取締役は、第三者に対する取締役としての責任で問題となることが多く、日本の最高裁判所の判例では、取締役として就任している以上は取締役としての監視義務があり、名目的であることをもって第三者に対する取締役としての責任を免れることはできないとする。一方、下級裁判所では、この判例を踏まえつつも、個々の事情により名目的取締役の第三者に対する責任を否定する裁判例も少なくない。

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  • 名目的取締役(めいもくてきとりしまりやく)とは、適法な選任手続きを経て取締役に就任しているが、当該会社との間で取締役としての職務を果たさなくてもよいとの合意があるなど、実際には取締役としての職務を行っていない者を指す法理論上の概念である。取締役の員数を揃えるため、あるいは社会的地位のある人物を取締役とすることで会社の信用を高める目的で置かれることが多い。日本では、2005年(平成17年)改正前商法(以下、「旧商法」とする)において、株式会社には最低3名の取締役を置くことが必要であったことから、特に中小企業において多く見られた。 名目取締役(めいもくとりしまりやく)、名目上の取締役(めいもくじょうのとりしまりやく)ともいう。監査役の場合は名目的監査役(めいもくてきかんさやく)という。 名目的取締役は、第三者に対する取締役としての責任で問題となることが多く、日本の最高裁判所の判例では、取締役として就任している以上は取締役としての監視義務があり、名目的であることをもって第三者に対する取締役としての責任を免れることはできないとする。一方、下級裁判所では、この判例を踏まえつつも、個々の事情により名目的取締役の第三者に対する責任を否定する裁判例も少なくない。 (ja)
  • 名目的取締役(めいもくてきとりしまりやく)とは、適法な選任手続きを経て取締役に就任しているが、当該会社との間で取締役としての職務を果たさなくてもよいとの合意があるなど、実際には取締役としての職務を行っていない者を指す法理論上の概念である。取締役の員数を揃えるため、あるいは社会的地位のある人物を取締役とすることで会社の信用を高める目的で置かれることが多い。日本では、2005年(平成17年)改正前商法(以下、「旧商法」とする)において、株式会社には最低3名の取締役を置くことが必要であったことから、特に中小企業において多く見られた。 名目取締役(めいもくとりしまりやく)、名目上の取締役(めいもくじょうのとりしまりやく)ともいう。監査役の場合は名目的監査役(めいもくてきかんさやく)という。 名目的取締役は、第三者に対する取締役としての責任で問題となることが多く、日本の最高裁判所の判例では、取締役として就任している以上は取締役としての監視義務があり、名目的であることをもって第三者に対する取締役としての責任を免れることはできないとする。一方、下級裁判所では、この判例を踏まえつつも、個々の事情により名目的取締役の第三者に対する責任を否定する裁判例も少なくない。 (ja)
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  • 新起業法弁護士研究会 編 『会社役員の法律相談』 青林書院〈青林法律相談〉、1999年、ISBN 4-417-01182-6。 (ja)
  • 加美和照 『会社取締役法制度研究』 中央大学出版部、2000年、ISBN 4805705523。 (ja)
  • 中村信男 「イギリス会社法における影の取締役規制の進展・変容と日本法への示唆」『私法』71号、日本私法学会、2009年、253-260頁, 。 (ja)
  • 坂本達也 「イギリスにおける影の取締役制度」『私法』72号、日本私法学会、2010年、211-217頁, 。 (ja)
  • 伊藤靖史ほか 『事例で考える会社法』(第2版) 有斐閣〈法学教室LIBRARY〉、2015年、ISBN 978-4641137295。 (ja)
  • 今川嘉文 『会社法にみる法人役員の責任 ― 株式会社・一般社団法人・社会福祉法人・医療法人・学校法人・NPO法人・宗教法人・LLPの実務と判例 ―』 日本加除出版、2012年、ISBN 978-4817840301。 (ja)
  • 酒巻俊雄・龍田節ほか編 『逐条解説会社法 第5巻 機関・2』 中央経済社、2011年、ISBN 978-4502050206。 (ja)
  • 宮島司 編著 『現代会社法用語辞典』 税務経理協会、2008年、ISBN 978-4419049621。 (ja)
  • 浜田道代・岩原紳作編 『会社法の争点』 有斐閣〈新・法律学の争点シリーズ〉5、2009年、ISBN 978-4641113213。 (ja)
  • 草間秀樹 「イギリス法における影の取締役 : Hydrodan事件とDeverell事件との比較研究」『北海学園大学学園論集』第157号、北海学園大学学術研究会、2013年、227-243頁。 (ja)
  • 高橋美加 「事実上の取締役の対第三者責任について」『会社・金融・法』上、商事法務、2013年、345-373頁、ISBN 978-4-7857-2125-1。 (ja)
  • 中村信男・受川環大 編 『ロースクール演習 会社法』(第3版) 法学書院、2012年、ISBN 978-4587040024。 (ja)
  • 神田秀樹 『会社法』(第17版) 弘文堂〈法律学講座双書〉、2015年、ISBN 978-4335304712。 (ja)
  • 瀬谷ゆり子 「名目的取締役の第三者に対する責任 : 新会社法における機関構成をふまえて」『桃山法学』6号、桃山学院大学総合研究所、2005年、33-53頁、。 (ja)
  • 岩原紳作 編 『会社法コンメンタール第9巻 機関(3)』 商事法務、2014年、ISBN 978-4785722104。 (ja)
  • 澤口実 『新しい役員責任の実務』(第2版) 商事法務、2012年、ISBN 978-4-7857-1957-9。 (ja)
  • 新起業法弁護士研究会 編 『会社役員の法律相談』 青林書院〈青林法律相談〉、1999年、ISBN 4-417-01182-6。 (ja)
  • 加美和照 『会社取締役法制度研究』 中央大学出版部、2000年、ISBN 4805705523。 (ja)
  • 中村信男 「イギリス会社法における影の取締役規制の進展・変容と日本法への示唆」『私法』71号、日本私法学会、2009年、253-260頁, 。 (ja)
  • 坂本達也 「イギリスにおける影の取締役制度」『私法』72号、日本私法学会、2010年、211-217頁, 。 (ja)
  • 伊藤靖史ほか 『事例で考える会社法』(第2版) 有斐閣〈法学教室LIBRARY〉、2015年、ISBN 978-4641137295。 (ja)
  • 今川嘉文 『会社法にみる法人役員の責任 ― 株式会社・一般社団法人・社会福祉法人・医療法人・学校法人・NPO法人・宗教法人・LLPの実務と判例 ―』 日本加除出版、2012年、ISBN 978-4817840301。 (ja)
  • 酒巻俊雄・龍田節ほか編 『逐条解説会社法 第5巻 機関・2』 中央経済社、2011年、ISBN 978-4502050206。 (ja)
  • 宮島司 編著 『現代会社法用語辞典』 税務経理協会、2008年、ISBN 978-4419049621。 (ja)
  • 浜田道代・岩原紳作編 『会社法の争点』 有斐閣〈新・法律学の争点シリーズ〉5、2009年、ISBN 978-4641113213。 (ja)
  • 草間秀樹 「イギリス法における影の取締役 : Hydrodan事件とDeverell事件との比較研究」『北海学園大学学園論集』第157号、北海学園大学学術研究会、2013年、227-243頁。 (ja)
  • 高橋美加 「事実上の取締役の対第三者責任について」『会社・金融・法』上、商事法務、2013年、345-373頁、ISBN 978-4-7857-2125-1。 (ja)
  • 中村信男・受川環大 編 『ロースクール演習 会社法』(第3版) 法学書院、2012年、ISBN 978-4587040024。 (ja)
  • 神田秀樹 『会社法』(第17版) 弘文堂〈法律学講座双書〉、2015年、ISBN 978-4335304712。 (ja)
  • 瀬谷ゆり子 「名目的取締役の第三者に対する責任 : 新会社法における機関構成をふまえて」『桃山法学』6号、桃山学院大学総合研究所、2005年、33-53頁、。 (ja)
  • 岩原紳作 編 『会社法コンメンタール第9巻 機関(3)』 商事法務、2014年、ISBN 978-4785722104。 (ja)
  • 澤口実 『新しい役員責任の実務』(第2版) 商事法務、2012年、ISBN 978-4-7857-1957-9。 (ja)
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prop-ja:事件名
  • 損害賠償請求事件 (ja)
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  • 昭和53年(オ)第369号 (ja)
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  • 集民第129号331頁 (ja)
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  • 旧商法266条の3(現行会社法429条1項) (ja)
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  • なし (ja)
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prop-ja:多数意見
  • 全員一致 (ja)
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prop-ja:意見
  • なし (ja)
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prop-ja:法廷名
  • 第三小法廷 (ja)
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prop-ja:裁判要旨
  • 会社に常勤せず経営にも関与しない前提で名目的に取締役に就任した者であっても、代表取締役の業務執行を監視せず独断専行に任せて第三者に損害を与えた場合、この名目的取締役は商法266条の3第1項前段(現行会社法429条)の損害賠償責任を負う。 (ja)
  • 会社に常勤せず経営にも関与しない前提で名目的に取締役に就任した者であっても、代表取締役の業務執行を監視せず独断専行に任せて第三者に損害を与えた場合、この名目的取締役は商法266条の3第1項前段(現行会社法429条)の損害賠償責任を負う。 (ja)
prop-ja:裁判長
  • 環昌一 (ja)
  • 環昌一 (ja)
prop-ja:陪席裁判官
  • 江里口清雄・横井大三・伊藤正己 (ja)
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  • 名目的取締役(めいもくてきとりしまりやく)とは、適法な選任手続きを経て取締役に就任しているが、当該会社との間で取締役としての職務を果たさなくてもよいとの合意があるなど、実際には取締役としての職務を行っていない者を指す法理論上の概念である。取締役の員数を揃えるため、あるいは社会的地位のある人物を取締役とすることで会社の信用を高める目的で置かれることが多い。日本では、2005年(平成17年)改正前商法(以下、「旧商法」とする)において、株式会社には最低3名の取締役を置くことが必要であったことから、特に中小企業において多く見られた。 名目取締役(めいもくとりしまりやく)、名目上の取締役(めいもくじょうのとりしまりやく)ともいう。監査役の場合は名目的監査役(めいもくてきかんさやく)という。 名目的取締役は、第三者に対する取締役としての責任で問題となることが多く、日本の最高裁判所の判例では、取締役として就任している以上は取締役としての監視義務があり、名目的であることをもって第三者に対する取締役としての責任を免れることはできないとする。一方、下級裁判所では、この判例を踏まえつつも、個々の事情により名目的取締役の第三者に対する責任を否定する裁判例も少なくない。 (ja)
  • 名目的取締役(めいもくてきとりしまりやく)とは、適法な選任手続きを経て取締役に就任しているが、当該会社との間で取締役としての職務を果たさなくてもよいとの合意があるなど、実際には取締役としての職務を行っていない者を指す法理論上の概念である。取締役の員数を揃えるため、あるいは社会的地位のある人物を取締役とすることで会社の信用を高める目的で置かれることが多い。日本では、2005年(平成17年)改正前商法(以下、「旧商法」とする)において、株式会社には最低3名の取締役を置くことが必要であったことから、特に中小企業において多く見られた。 名目取締役(めいもくとりしまりやく)、名目上の取締役(めいもくじょうのとりしまりやく)ともいう。監査役の場合は名目的監査役(めいもくてきかんさやく)という。 名目的取締役は、第三者に対する取締役としての責任で問題となることが多く、日本の最高裁判所の判例では、取締役として就任している以上は取締役としての監視義務があり、名目的であることをもって第三者に対する取締役としての責任を免れることはできないとする。一方、下級裁判所では、この判例を踏まえつつも、個々の事情により名目的取締役の第三者に対する責任を否定する裁判例も少なくない。 (ja)
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