ベイナイト(英: bainite、米国の冶金学者エドガー・ベインに由来する)は炭素鋼や低合金鋼の等温保持或いは連続冷却の熱処理により生じる金属組織(相ではない)の一つである。 中間組織(独: Zwischenstufengefüge、英: intermediate structure)または中間段階変態生成物(組織)(独: Zwischenstufen Umwandlungsprodukt、英: intermediate stage transformation products)、或いはその頭文字Zwの語は特にドイツ語圏において「広義の」ベイナイトとほぼ同じ意味で用いられる。これはミクロ組織の生成する温度及び冷却速度がパーライト変態とマルテンサイト変態の間にあることによる。つまりZwは「狭義の」ベイナイトを含む変態組織の総称であるから、Zwの意味でベイナイトを用いるのは適切でない。ドイツ語圏では用語の問題を避けるために、以前からZwと呼ばれてきたのである。

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  • ベイナイト(英: bainite、米国の冶金学者エドガー・ベインに由来する)は炭素鋼や低合金鋼の等温保持或いは連続冷却の熱処理により生じる金属組織(相ではない)の一つである。 中間組織(独: Zwischenstufengefüge、英: intermediate structure)または中間段階変態生成物(組織)(独: Zwischenstufen Umwandlungsprodukt、英: intermediate stage transformation products)、或いはその頭文字Zwの語は特にドイツ語圏において「広義の」ベイナイトとほぼ同じ意味で用いられる。これはミクロ組織の生成する温度及び冷却速度がパーライト変態とマルテンサイト変態の間にあることによる。つまりZwは「狭義の」ベイナイトを含む変態組織の総称であるから、Zwの意味でベイナイトを用いるのは適切でない。ドイツ語圏では用語の問題を避けるために、以前からZwと呼ばれてきたのである。 この温度域においては、マルテンサイト変態の急激な結晶構造の変化(無拡散変態)と拡散変態が結びついて、異なる変態機構が起こりうる。冷却速度及び炭素量、合金元素とその結果としての変態温度への依存性から、「広義の」ベイナイトは固有の形態を持たない。ベイナイトには、パーライトと同様にフェライト相(α)とセメンタイト相(Fe3C)が含まれているものの、その形や大きさ、分散状況が大きく異なる。ベイナイト組織の形態として、上部ベイナイト(或いはグラニュラーベイナイト)及び下部ベイナイトの区別が知られている。 オーステンパー或いは等温変態におけるベイナイト変態は、オーステナイト(γ)化に続く焼入れ中のMs点(マルテンサイト変態開始温度)以上の温度(約250-550℃、合金元素にあまり依存しない)で起こる。この時パーライト変態が起きないレベルの冷却速度を選ばなければならない。Ms点以上の温度に保持することで、オーステナイトはほぼ全てベイナイトに変態する。 オーステナイト結晶又は不完全性によるウムクラップ過程(熱ゆらぎ)から、炭素が過飽和した体心立方格子(Bcc格子)を持つフェライト粒が生成する。フェライト粒内の球状或いは楕円状セメンタイトが生成する際のBcc格子の速い拡散のために、下部ベイナイトでは速い速度で炭素が吐き出される。一方、上部ベイナイトにおいてはオーステナイトと同程度の速度で炭素の拡散と炭化物の生成が進む。 上部ベイナイトはベイナイト変態温度域の高い側で生成し、マルテンサイト組織を思わせるよく類似した針状組織を持つ。結晶粒界における炭素の拡散が有利であるために、針状のフェライトが拡散変態して生成される。このとき不規則かつ不連続なセメンタイトが生成される。この不規則な分布のために、このミクロ組織はたいてい粒状組織として観察される。このミクロ組織はしばしばパーライト組織或いはウイドマンステッテン組織と混同されることがあるが、不適切である。 下部ベイナイトは等温保持或いは連続冷却でベイナイト変態温度域の低い温度側で生成する。このミクロ組織においては、下部ベイナイトのフェライトとセメンタイトの生成が進んでいくとともに、残ったオーステナイトに炭素が濃縮され(てMs点が上昇し、オーステナイトがマルテンサイト変態す)るために、針状のベイナイト‐マルテンサイト混合組織となる。オーステンパーを用いた場合、残留応力が減少するとともに靱性が改善され、亀裂感受性が改善されるともに、複雑な形状のミクロ組織が得られる。 (ja)
  • ベイナイト(英: bainite、米国の冶金学者エドガー・ベインに由来する)は炭素鋼や低合金鋼の等温保持或いは連続冷却の熱処理により生じる金属組織(相ではない)の一つである。 中間組織(独: Zwischenstufengefüge、英: intermediate structure)または中間段階変態生成物(組織)(独: Zwischenstufen Umwandlungsprodukt、英: intermediate stage transformation products)、或いはその頭文字Zwの語は特にドイツ語圏において「広義の」ベイナイトとほぼ同じ意味で用いられる。これはミクロ組織の生成する温度及び冷却速度がパーライト変態とマルテンサイト変態の間にあることによる。つまりZwは「狭義の」ベイナイトを含む変態組織の総称であるから、Zwの意味でベイナイトを用いるのは適切でない。ドイツ語圏では用語の問題を避けるために、以前からZwと呼ばれてきたのである。 この温度域においては、マルテンサイト変態の急激な結晶構造の変化(無拡散変態)と拡散変態が結びついて、異なる変態機構が起こりうる。冷却速度及び炭素量、合金元素とその結果としての変態温度への依存性から、「広義の」ベイナイトは固有の形態を持たない。ベイナイトには、パーライトと同様にフェライト相(α)とセメンタイト相(Fe3C)が含まれているものの、その形や大きさ、分散状況が大きく異なる。ベイナイト組織の形態として、上部ベイナイト(或いはグラニュラーベイナイト)及び下部ベイナイトの区別が知られている。 オーステンパー或いは等温変態におけるベイナイト変態は、オーステナイト(γ)化に続く焼入れ中のMs点(マルテンサイト変態開始温度)以上の温度(約250-550℃、合金元素にあまり依存しない)で起こる。この時パーライト変態が起きないレベルの冷却速度を選ばなければならない。Ms点以上の温度に保持することで、オーステナイトはほぼ全てベイナイトに変態する。 オーステナイト結晶又は不完全性によるウムクラップ過程(熱ゆらぎ)から、炭素が過飽和した体心立方格子(Bcc格子)を持つフェライト粒が生成する。フェライト粒内の球状或いは楕円状セメンタイトが生成する際のBcc格子の速い拡散のために、下部ベイナイトでは速い速度で炭素が吐き出される。一方、上部ベイナイトにおいてはオーステナイトと同程度の速度で炭素の拡散と炭化物の生成が進む。 上部ベイナイトはベイナイト変態温度域の高い側で生成し、マルテンサイト組織を思わせるよく類似した針状組織を持つ。結晶粒界における炭素の拡散が有利であるために、針状のフェライトが拡散変態して生成される。このとき不規則かつ不連続なセメンタイトが生成される。この不規則な分布のために、このミクロ組織はたいてい粒状組織として観察される。このミクロ組織はしばしばパーライト組織或いはウイドマンステッテン組織と混同されることがあるが、不適切である。 下部ベイナイトは等温保持或いは連続冷却でベイナイト変態温度域の低い温度側で生成する。このミクロ組織においては、下部ベイナイトのフェライトとセメンタイトの生成が進んでいくとともに、残ったオーステナイトに炭素が濃縮され(てMs点が上昇し、オーステナイトがマルテンサイト変態す)るために、針状のベイナイト‐マルテンサイト混合組織となる。オーステンパーを用いた場合、残留応力が減少するとともに靱性が改善され、亀裂感受性が改善されるともに、複雑な形状のミクロ組織が得られる。 (ja)
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  • ベイナイト(英: bainite、米国の冶金学者エドガー・ベインに由来する)は炭素鋼や低合金鋼の等温保持或いは連続冷却の熱処理により生じる金属組織(相ではない)の一つである。 中間組織(独: Zwischenstufengefüge、英: intermediate structure)または中間段階変態生成物(組織)(独: Zwischenstufen Umwandlungsprodukt、英: intermediate stage transformation products)、或いはその頭文字Zwの語は特にドイツ語圏において「広義の」ベイナイトとほぼ同じ意味で用いられる。これはミクロ組織の生成する温度及び冷却速度がパーライト変態とマルテンサイト変態の間にあることによる。つまりZwは「狭義の」ベイナイトを含む変態組織の総称であるから、Zwの意味でベイナイトを用いるのは適切でない。ドイツ語圏では用語の問題を避けるために、以前からZwと呼ばれてきたのである。 (ja)
  • ベイナイト(英: bainite、米国の冶金学者エドガー・ベインに由来する)は炭素鋼や低合金鋼の等温保持或いは連続冷却の熱処理により生じる金属組織(相ではない)の一つである。 中間組織(独: Zwischenstufengefüge、英: intermediate structure)または中間段階変態生成物(組織)(独: Zwischenstufen Umwandlungsprodukt、英: intermediate stage transformation products)、或いはその頭文字Zwの語は特にドイツ語圏において「広義の」ベイナイトとほぼ同じ意味で用いられる。これはミクロ組織の生成する温度及び冷却速度がパーライト変態とマルテンサイト変態の間にあることによる。つまりZwは「狭義の」ベイナイトを含む変態組織の総称であるから、Zwの意味でベイナイトを用いるのは適切でない。ドイツ語圏では用語の問題を避けるために、以前からZwと呼ばれてきたのである。 (ja)
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  • ベイナイト (ja)
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