ヒジュラ(アラビア語: هِجْرَة)は、622年にイスラームの預言者であるムハンマドと彼に従うムスリムがマッカからマディーナへ移住した出来事である。日本語では聖遷とも呼称される。 マッカでイスラームの布教を行っていたムハンマドと彼に従うムスリムは、クライシュ族などのマッカの住民から迫害を受けていた。一方、マッカの北方にあるヤスリブ(現在のマディーナ)は何十年にも渡る部族間抗争で疲弊しており、強力な調停者を必要としていた。620年に6人のヤスリブの住民がイスラームに改宗したことをきっかけにヤスリブのイスラーム化が進み、武力をもってムハンマドとイスラームを守る誓いも行われた。622年、ムハンマドはヤスリブより調停者として招待を受け、ムハンマドは70人余りのムスリムをヤスリブに移住させた後に、アブー・バクルと共に自らも移住した。 ヒジュラによってイスラーム共同体であるウンマが形成され、これは後のイスラーム社会や国家の原型となった。また、2代目正統カリフであるウマル・イブン・ハッターブによって定められたヒジュラ暦の起点にもなった。 なお、「マディーナ」はヒジュラ後に名付けられた都市名であるため、本稿ではヒジュラが行われて改名されるまでは旧称である「ヤスリブ」と表記する。