マクロ経済思想史(マクロけいざいしそうし)では、マクロ経済学思想の歴史について概説する。 マクロ経済思想は、景気循環理論と貨幣理論の研究から始まる。初期に一般的だった「古典理論」では貨幣的な要因が実体経済に影響することはないと考えられていた。ジョン・メイナード・ケインズは古典理論を批判し、代わりに「一般理論」を唱え、ミクロの経済を個々の部分ごとに分析するのではなく、マクロの集計量の視点から経済全体を俯瞰する。一般理論によると、失業や不況が生じる原因は不況期に人々や企業が現金を貯めこみ投資を避けることにある。古典派経済学者の想定では常に市場がクリアして財の余剰や労働の遊休が生じないとされるが、このような想定は無効であるというのがケインズの主張である。

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  • マクロ経済思想史(マクロけいざいしそうし)では、マクロ経済学思想の歴史について概説する。 マクロ経済思想は、景気循環理論と貨幣理論の研究から始まる。初期に一般的だった「古典理論」では貨幣的な要因が実体経済に影響することはないと考えられていた。ジョン・メイナード・ケインズは古典理論を批判し、代わりに「一般理論」を唱え、ミクロの経済を個々の部分ごとに分析するのではなく、マクロの集計量の視点から経済全体を俯瞰する。一般理論によると、失業や不況が生じる原因は不況期に人々や企業が現金を貯めこみ投資を避けることにある。古典派経済学者の想定では常に市場がクリアして財の余剰や労働の遊休が生じないとされるが、このような想定は無効であるというのがケインズの主張である。 ケインズを継いだ次世代の経済学者たちは、ケインズ理論を新古典派(ネオ・クラシカル)ミクロ経済学に統合し、新古典派総合(ネオ・クラシカル・シンセシス)を形成した。本来のケインズ理論は物価水準やインフレの説明を省いていたが、ケインジアンは後にフィリップス曲線を用いてインフレをモデル化した。このようにケインズの理論を均衡システムに組み合わせる新古典派総合の方法論に対して、一部のケインジアンがこれを批判し、代わりに不均衡モデルを提唱した。また、ミルトン・フリードマン率いるマネタリストは、ケインジアンのアイデアの一部を採用して貨幣需要を重視したが、貨幣供給がインフレに及ぼす影響をケインジアンが無視していると指摘した。さらに、ロバート・ルーカスを始めとするニュー・クラシカル経済学者は合理的期待の観点からケインジアン・モデルを批判した。に基づかないケインジアン実証モデルは安定しないともルーカスは論じた。 ニュー・クラシカル学派の極致はリアルビジネスサイクル理論(RBC)である。RBCモデルは、初期の古典派経済モデルと同様に市場がクリアすると仮定し、景気循環の原因を需要要因よりむしろ技術や供給の変化に求める。このようなニュー・クラシカル派によるケインジアン批判に対抗して現れたのがニュー・ケインジアンである。ニュー・ケインジアンは合理的期待を採用するとともに、粘着価格のミクロ基礎に基づいてモデルを構築し、不況を需要要因で説明できると主張する。価格硬直性のために市場クリア水準まで価格が下がらず、財や労働が余るからである。新しい新古典派総合(ニュー・ネオ・クラシカル・シンセシス)は、ニュー・クラシカルとニュー・ケインジアンの双方の要素を統合した。他の経済学者は、短期のダイナミクスに関するニュー・クラシカルとニュー・ケインジアンの論争を避け、長期経済成長の新しい成長理論を発展させた。世界金融危機とその後の不況はマクロ経済理論への反省を促し、異端派経済学への注目を高めた。 (ja)
  • マクロ経済思想史(マクロけいざいしそうし)では、マクロ経済学思想の歴史について概説する。 マクロ経済思想は、景気循環理論と貨幣理論の研究から始まる。初期に一般的だった「古典理論」では貨幣的な要因が実体経済に影響することはないと考えられていた。ジョン・メイナード・ケインズは古典理論を批判し、代わりに「一般理論」を唱え、ミクロの経済を個々の部分ごとに分析するのではなく、マクロの集計量の視点から経済全体を俯瞰する。一般理論によると、失業や不況が生じる原因は不況期に人々や企業が現金を貯めこみ投資を避けることにある。古典派経済学者の想定では常に市場がクリアして財の余剰や労働の遊休が生じないとされるが、このような想定は無効であるというのがケインズの主張である。 ケインズを継いだ次世代の経済学者たちは、ケインズ理論を新古典派(ネオ・クラシカル)ミクロ経済学に統合し、新古典派総合(ネオ・クラシカル・シンセシス)を形成した。本来のケインズ理論は物価水準やインフレの説明を省いていたが、ケインジアンは後にフィリップス曲線を用いてインフレをモデル化した。このようにケインズの理論を均衡システムに組み合わせる新古典派総合の方法論に対して、一部のケインジアンがこれを批判し、代わりに不均衡モデルを提唱した。また、ミルトン・フリードマン率いるマネタリストは、ケインジアンのアイデアの一部を採用して貨幣需要を重視したが、貨幣供給がインフレに及ぼす影響をケインジアンが無視していると指摘した。さらに、ロバート・ルーカスを始めとするニュー・クラシカル経済学者は合理的期待の観点からケインジアン・モデルを批判した。に基づかないケインジアン実証モデルは安定しないともルーカスは論じた。 ニュー・クラシカル学派の極致はリアルビジネスサイクル理論(RBC)である。RBCモデルは、初期の古典派経済モデルと同様に市場がクリアすると仮定し、景気循環の原因を需要要因よりむしろ技術や供給の変化に求める。このようなニュー・クラシカル派によるケインジアン批判に対抗して現れたのがニュー・ケインジアンである。ニュー・ケインジアンは合理的期待を採用するとともに、粘着価格のミクロ基礎に基づいてモデルを構築し、不況を需要要因で説明できると主張する。価格硬直性のために市場クリア水準まで価格が下がらず、財や労働が余るからである。新しい新古典派総合(ニュー・ネオ・クラシカル・シンセシス)は、ニュー・クラシカルとニュー・ケインジアンの双方の要素を統合した。他の経済学者は、短期のダイナミクスに関するニュー・クラシカルとニュー・ケインジアンの論争を避け、長期経済成長の新しい成長理論を発展させた。世界金融危機とその後の不況はマクロ経済理論への反省を促し、異端派経済学への注目を高めた。 (ja)
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  • マクロ経済思想史(マクロけいざいしそうし)では、マクロ経済学思想の歴史について概説する。 マクロ経済思想は、景気循環理論と貨幣理論の研究から始まる。初期に一般的だった「古典理論」では貨幣的な要因が実体経済に影響することはないと考えられていた。ジョン・メイナード・ケインズは古典理論を批判し、代わりに「一般理論」を唱え、ミクロの経済を個々の部分ごとに分析するのではなく、マクロの集計量の視点から経済全体を俯瞰する。一般理論によると、失業や不況が生じる原因は不況期に人々や企業が現金を貯めこみ投資を避けることにある。古典派経済学者の想定では常に市場がクリアして財の余剰や労働の遊休が生じないとされるが、このような想定は無効であるというのがケインズの主張である。 (ja)
  • マクロ経済思想史(マクロけいざいしそうし)では、マクロ経済学思想の歴史について概説する。 マクロ経済思想は、景気循環理論と貨幣理論の研究から始まる。初期に一般的だった「古典理論」では貨幣的な要因が実体経済に影響することはないと考えられていた。ジョン・メイナード・ケインズは古典理論を批判し、代わりに「一般理論」を唱え、ミクロの経済を個々の部分ごとに分析するのではなく、マクロの集計量の視点から経済全体を俯瞰する。一般理論によると、失業や不況が生じる原因は不況期に人々や企業が現金を貯めこみ投資を避けることにある。古典派経済学者の想定では常に市場がクリアして財の余剰や労働の遊休が生じないとされるが、このような想定は無効であるというのがケインズの主張である。 (ja)
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  • マクロ経済思想史 (ja)
  • マクロ経済思想史 (ja)
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