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- 外送理論(がいそうりろん、英:Emission theory, Extramission theory)とは、科学史の用語で、視覚論の類型の一つ。内送理論(英: Intromission theory)と対になる用語。これらの用語は、古代ギリシアの影響の強かった地域や時代(古代ギリシア・ローマ、中世アラビア語圏、中世後半から近代初期の西欧)の視覚論や光学の歴史を論じるときに用いられることが多い。ただし、内送理論/外送理論以外の分類もしばしば用いられる。 内送理論は、外部から眼への流入物を受動的に受けとった結果として、視覚を説明する。現代の視覚論は、光の流入によって視覚を説明するので、この分類では内送理論である。 それに対して、眼から放たれる放出物に中心的な役割を担わせる様々な理論を、まとめて外送理論という。例えばプトレマイオスの理論では、「視線」(英 Visual Ray)とよばれる光に似た射線が円錐状に眼から放出されるとする。一方、ストア派やガレノスは、神経系の情報伝達を担う「プネウマ」が眼から放出されるとする。前者の「視線」は視覚対象まで届くが、後者は空気に働きかけ、あまり遠くまでは飛ばない。いずれの理論においても、最終的には視覚対象から眼に「色」が流入することで視覚が成立するとしている。 このように、同じく外送理論に分類されても、眼からの放出物の内容や働きは様々で、視る対象まで放出物が届くことは必ずしも必要とされない。またほぼ全ての主要な理論は「内送」と「外送」の両方の要素を持ち、「光」にもある一定の役割が与えられている。 古代ギリシアには、エウクレイデス(ユークリッド)、ヘロン、プトレマイオスらの幾何学的な視覚論があったが、それらはある種の外送理論に基づいていた。彼らの理論は、測量や遠近法などの応用と結びついており、「視線」を光に置きかえて解釈すれば、現代の幾何光学の理論と一致する部分も多い。また、上述のガレノスは、本格的な生理学や解剖学の知見を初めて視覚論に取り入れた。ガレノスやストア派の外送理論は、幾何学者のそれとは異なる点が多かったが、ガレノスは両者を対立させずに併用していた。 外送理論に対抗して、デモクリトスやエピクロスなどの原子論者、そしてアリストテレスは、各々独自の内送理論を展開していた。しかし、どちらの理論も不合理な点があり、幾何学的な理論や解剖学などの個別的な学問分野との結びつきが弱く、現象の説明能力で劣った。また後者は細部に具体性が欠けており、アリストテレス派は現象の説明では外送理論に頼ることも多かった。 外送理論が優位な状況は中世に入っても続いた。現代の視覚論に繋がる、光の流入に基づく視覚論の端緒は、11世紀のイブン・ハイサムであった。彼はガレノスの解剖学やアリストテレスの感覚論も取り入れたが、特にプトレマイオスやキンディーの幾何学的な外送理論に大きな影響をうけた。「光学」を意味する英語opticsの語源は、視覚の幾何学的な理論を意味するギリシア語 ta optika である。 外送理論は、光による視覚論と一致する結論を導く場合も多く、この後も数世紀にわたり両者は共存する。 また、外送理論は伝統的な「邪視」の説とも結びついた。 (ja)
- 外送理論(がいそうりろん、英:Emission theory, Extramission theory)とは、科学史の用語で、視覚論の類型の一つ。内送理論(英: Intromission theory)と対になる用語。これらの用語は、古代ギリシアの影響の強かった地域や時代(古代ギリシア・ローマ、中世アラビア語圏、中世後半から近代初期の西欧)の視覚論や光学の歴史を論じるときに用いられることが多い。ただし、内送理論/外送理論以外の分類もしばしば用いられる。 内送理論は、外部から眼への流入物を受動的に受けとった結果として、視覚を説明する。現代の視覚論は、光の流入によって視覚を説明するので、この分類では内送理論である。 それに対して、眼から放たれる放出物に中心的な役割を担わせる様々な理論を、まとめて外送理論という。例えばプトレマイオスの理論では、「視線」(英 Visual Ray)とよばれる光に似た射線が円錐状に眼から放出されるとする。一方、ストア派やガレノスは、神経系の情報伝達を担う「プネウマ」が眼から放出されるとする。前者の「視線」は視覚対象まで届くが、後者は空気に働きかけ、あまり遠くまでは飛ばない。いずれの理論においても、最終的には視覚対象から眼に「色」が流入することで視覚が成立するとしている。 このように、同じく外送理論に分類されても、眼からの放出物の内容や働きは様々で、視る対象まで放出物が届くことは必ずしも必要とされない。またほぼ全ての主要な理論は「内送」と「外送」の両方の要素を持ち、「光」にもある一定の役割が与えられている。 古代ギリシアには、エウクレイデス(ユークリッド)、ヘロン、プトレマイオスらの幾何学的な視覚論があったが、それらはある種の外送理論に基づいていた。彼らの理論は、測量や遠近法などの応用と結びついており、「視線」を光に置きかえて解釈すれば、現代の幾何光学の理論と一致する部分も多い。また、上述のガレノスは、本格的な生理学や解剖学の知見を初めて視覚論に取り入れた。ガレノスやストア派の外送理論は、幾何学者のそれとは異なる点が多かったが、ガレノスは両者を対立させずに併用していた。 外送理論に対抗して、デモクリトスやエピクロスなどの原子論者、そしてアリストテレスは、各々独自の内送理論を展開していた。しかし、どちらの理論も不合理な点があり、幾何学的な理論や解剖学などの個別的な学問分野との結びつきが弱く、現象の説明能力で劣った。また後者は細部に具体性が欠けており、アリストテレス派は現象の説明では外送理論に頼ることも多かった。 外送理論が優位な状況は中世に入っても続いた。現代の視覚論に繋がる、光の流入に基づく視覚論の端緒は、11世紀のイブン・ハイサムであった。彼はガレノスの解剖学やアリストテレスの感覚論も取り入れたが、特にプトレマイオスやキンディーの幾何学的な外送理論に大きな影響をうけた。「光学」を意味する英語opticsの語源は、視覚の幾何学的な理論を意味するギリシア語 ta optika である。 外送理論は、光による視覚論と一致する結論を導く場合も多く、この後も数世紀にわたり両者は共存する。 また、外送理論は伝統的な「邪視」の説とも結びついた。 (ja)
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- 外送理論(がいそうりろん、英:Emission theory, Extramission theory)とは、科学史の用語で、視覚論の類型の一つ。内送理論(英: Intromission theory)と対になる用語。これらの用語は、古代ギリシアの影響の強かった地域や時代(古代ギリシア・ローマ、中世アラビア語圏、中世後半から近代初期の西欧)の視覚論や光学の歴史を論じるときに用いられることが多い。ただし、内送理論/外送理論以外の分類もしばしば用いられる。 内送理論は、外部から眼への流入物を受動的に受けとった結果として、視覚を説明する。現代の視覚論は、光の流入によって視覚を説明するので、この分類では内送理論である。 それに対して、眼から放たれる放出物に中心的な役割を担わせる様々な理論を、まとめて外送理論という。例えばプトレマイオスの理論では、「視線」(英 Visual Ray)とよばれる光に似た射線が円錐状に眼から放出されるとする。一方、ストア派やガレノスは、神経系の情報伝達を担う「プネウマ」が眼から放出されるとする。前者の「視線」は視覚対象まで届くが、後者は空気に働きかけ、あまり遠くまでは飛ばない。いずれの理論においても、最終的には視覚対象から眼に「色」が流入することで視覚が成立するとしている。 また、外送理論は伝統的な「邪視」の説とも結びついた。 (ja)
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