固有状態熱化仮説(こゆうじょうたいねつかかせつ、英: eigenstate thermalization hypothesis; ETH)とは、孤立量子系が平衡統計力学を用いてよい精度で記述できるのは何故かを説明するための、量子力学における一連の仮説である。特に、初期状態では熱力学的平衡状態から離れている系が時間発展とともに平衡状態へ緩和(熱平衡化)するのかを理解するために、ETH が検討されている。 “eigenstate thermalization” という言葉はマーク・スレドニキが1994年に最初に用いたが、概念そのものは例えば、1991年にジョシュ・ドイチュが類似した仮説を導入していた。 ETH の基本的な思想は、古典力学で行われたように、熱力学系のエルゴード性を動的カオスの機構によって説明するのではなく、量子系の個々のエネルギー固有状態に対するオブザーバブルの行列要素の性質を検討すべきであるという考えに基づいている。