スピン密度波(-みつどは、SDW)と電荷密度波(でんかみつどは、CDW)は、固体におけるエネルギーの低い2つの似通った秩序状態を指す。2つの状態とも、異方的な低次元物質もしくはフェルミエネルギーに高い状態密度を持つ金属において低温でおきる。このような物質でおきる他の低温での基底状態は、超伝導、強磁性、反強磁性である。秩序状態への転移は、凝縮エネルギーによって引き起こされ、その大きさはおよそである。は転移によって開くエネルギーギャップの大きさである。SDWはスピン波とは異なることに注意しなければならない。スピン波は強磁性、反強磁性の励起である。 基本的にSDWとCDWは、周期的な変調をそれぞれ電子のスピンの密度と電荷の密度に生じ、それらは特徴的な空間周波数を持ち、はイオンの位置を表す対称群においては変化しない。CDWによる新たな周期性は、走査型トンネル顕微鏡や電子線回折によって簡単に見ることが出来る。これに比べSDWは見にくく、一般的に中性子回折法や磁化率測定によって見ることができる。もし新たな周期性が格子定数の整数分の1か整数倍の時は、波はコメンシュレートであると言い、そうでない時は、インコメンシュレートであると言う。

Property Value
dbo:abstract
  • スピン密度波(-みつどは、SDW)と電荷密度波(でんかみつどは、CDW)は、固体におけるエネルギーの低い2つの似通った秩序状態を指す。2つの状態とも、異方的な低次元物質もしくはフェルミエネルギーに高い状態密度を持つ金属において低温でおきる。このような物質でおきる他の低温での基底状態は、超伝導、強磁性、反強磁性である。秩序状態への転移は、凝縮エネルギーによって引き起こされ、その大きさはおよそである。は転移によって開くエネルギーギャップの大きさである。SDWはスピン波とは異なることに注意しなければならない。スピン波は強磁性、反強磁性の励起である。 基本的にSDWとCDWは、周期的な変調をそれぞれ電子のスピンの密度と電荷の密度に生じ、それらは特徴的な空間周波数を持ち、はイオンの位置を表す対称群においては変化しない。CDWによる新たな周期性は、走査型トンネル顕微鏡や電子線回折によって簡単に見ることが出来る。これに比べSDWは見にくく、一般的に中性子回折法や磁化率測定によって見ることができる。もし新たな周期性が格子定数の整数分の1か整数倍の時は、波はコメンシュレートであると言い、そうでない時は、インコメンシュレートであると言う。 なぜ、高いを持つ固体は低温で密度波を形成し、他の物質は超伝導や磁気的な基底状態をとるのか。その答えは物質のフェルミ面に存在するネスティングベクトルと関係している。ネスティングベクトルの概念を図に示す。これはよく知られたCrの場合である。Crはネール温度311Kで常磁性からSDW状態に転移する。Crは体心立方格子であり、フェルミ面の特徴として、点とH点を中心とする電子ポケットの間に、フェルミ面が多くの平行な境界を持っている。これらの大きい平行な領域は、図の赤で示されたネスティングベクトルによって結ばれている。スピン密度波によって出来た実空間での周期はで与えられる。この空間周波数のSDWができることによって、エネルギーギャップが開き、系のエネルギーが下がる。CrにおけるSDWの存在を始めて仮定したのはパデュー大学のである。MITのクリフォード・シャルは、CrにおけるSDWを実験で観測したことで、1994年にノーベル物理学賞を受賞した。CDWの理論を初めて提案したのは、超伝導を説明しようとしていたオックスフォード大学のルドルフ・パイエルスである。 低次元の固体の多くはフェルミ面が異方的であり、顕著なネスティングベクトルを持っている。有名なものに、層状物質のNbSe3、TaSe3、K0.03MoO3(Chevrel相)やのTMTSFやTTF-TCNQがある。CDWは固体の表面でも良く見られ、表面再構成や二量化などと呼ばれる。表面は二次元フェルミ面で描かれ、層状物質のようになっているので、CDWにとってしばしば都合が良い。 密度波の最も魅力的な性質は、そのダイナミクスである。適切な電場や磁場のもとでは、場の向いている方向に密度波が"スライド"する。電場や磁場の力によるものである。大抵は密度波のスライディングは直ちに起こらず、しきい電場を越えるまでは"ピン止め"されている。しきい値電場で、欠陥が作るポテンシャルから抜け出すことが出来る。したがって、密度波のヒステリシスのある動きは転位や磁区のものとは異なる。電荷密度波固体の電流電圧曲線は、ピン止め電圧までは非常に高い抵抗を示し、それより上ではオームの法則的な振る舞いを示す。ピン止め電圧は物質の純度に依存するが、この電圧以下では結晶は絶縁体である。 (ja)
  • スピン密度波(-みつどは、SDW)と電荷密度波(でんかみつどは、CDW)は、固体におけるエネルギーの低い2つの似通った秩序状態を指す。2つの状態とも、異方的な低次元物質もしくはフェルミエネルギーに高い状態密度を持つ金属において低温でおきる。このような物質でおきる他の低温での基底状態は、超伝導、強磁性、反強磁性である。秩序状態への転移は、凝縮エネルギーによって引き起こされ、その大きさはおよそである。は転移によって開くエネルギーギャップの大きさである。SDWはスピン波とは異なることに注意しなければならない。スピン波は強磁性、反強磁性の励起である。 基本的にSDWとCDWは、周期的な変調をそれぞれ電子のスピンの密度と電荷の密度に生じ、それらは特徴的な空間周波数を持ち、はイオンの位置を表す対称群においては変化しない。CDWによる新たな周期性は、走査型トンネル顕微鏡や電子線回折によって簡単に見ることが出来る。これに比べSDWは見にくく、一般的に中性子回折法や磁化率測定によって見ることができる。もし新たな周期性が格子定数の整数分の1か整数倍の時は、波はコメンシュレートであると言い、そうでない時は、インコメンシュレートであると言う。 なぜ、高いを持つ固体は低温で密度波を形成し、他の物質は超伝導や磁気的な基底状態をとるのか。その答えは物質のフェルミ面に存在するネスティングベクトルと関係している。ネスティングベクトルの概念を図に示す。これはよく知られたCrの場合である。Crはネール温度311Kで常磁性からSDW状態に転移する。Crは体心立方格子であり、フェルミ面の特徴として、点とH点を中心とする電子ポケットの間に、フェルミ面が多くの平行な境界を持っている。これらの大きい平行な領域は、図の赤で示されたネスティングベクトルによって結ばれている。スピン密度波によって出来た実空間での周期はで与えられる。この空間周波数のSDWができることによって、エネルギーギャップが開き、系のエネルギーが下がる。CrにおけるSDWの存在を始めて仮定したのはパデュー大学のである。MITのクリフォード・シャルは、CrにおけるSDWを実験で観測したことで、1994年にノーベル物理学賞を受賞した。CDWの理論を初めて提案したのは、超伝導を説明しようとしていたオックスフォード大学のルドルフ・パイエルスである。 低次元の固体の多くはフェルミ面が異方的であり、顕著なネスティングベクトルを持っている。有名なものに、層状物質のNbSe3、TaSe3、K0.03MoO3(Chevrel相)やのTMTSFやTTF-TCNQがある。CDWは固体の表面でも良く見られ、表面再構成や二量化などと呼ばれる。表面は二次元フェルミ面で描かれ、層状物質のようになっているので、CDWにとってしばしば都合が良い。 密度波の最も魅力的な性質は、そのダイナミクスである。適切な電場や磁場のもとでは、場の向いている方向に密度波が"スライド"する。電場や磁場の力によるものである。大抵は密度波のスライディングは直ちに起こらず、しきい電場を越えるまでは"ピン止め"されている。しきい値電場で、欠陥が作るポテンシャルから抜け出すことが出来る。したがって、密度波のヒステリシスのある動きは転位や磁区のものとは異なる。電荷密度波固体の電流電圧曲線は、ピン止め電圧までは非常に高い抵抗を示し、それより上ではオームの法則的な振る舞いを示す。ピン止め電圧は物質の純度に依存するが、この電圧以下では結晶は絶縁体である。 (ja)
dbo:thumbnail
dbo:wikiPageExternalLink
dbo:wikiPageID
  • 1785025 (xsd:integer)
dbo:wikiPageLength
  • 2990 (xsd:nonNegativeInteger)
dbo:wikiPageRevisionID
  • 71291551 (xsd:integer)
dbo:wikiPageWikiLink
dct:subject
rdfs:comment
  • スピン密度波(-みつどは、SDW)と電荷密度波(でんかみつどは、CDW)は、固体におけるエネルギーの低い2つの似通った秩序状態を指す。2つの状態とも、異方的な低次元物質もしくはフェルミエネルギーに高い状態密度を持つ金属において低温でおきる。このような物質でおきる他の低温での基底状態は、超伝導、強磁性、反強磁性である。秩序状態への転移は、凝縮エネルギーによって引き起こされ、その大きさはおよそである。は転移によって開くエネルギーギャップの大きさである。SDWはスピン波とは異なることに注意しなければならない。スピン波は強磁性、反強磁性の励起である。 基本的にSDWとCDWは、周期的な変調をそれぞれ電子のスピンの密度と電荷の密度に生じ、それらは特徴的な空間周波数を持ち、はイオンの位置を表す対称群においては変化しない。CDWによる新たな周期性は、走査型トンネル顕微鏡や電子線回折によって簡単に見ることが出来る。これに比べSDWは見にくく、一般的に中性子回折法や磁化率測定によって見ることができる。もし新たな周期性が格子定数の整数分の1か整数倍の時は、波はコメンシュレートであると言い、そうでない時は、インコメンシュレートであると言う。 (ja)
  • スピン密度波(-みつどは、SDW)と電荷密度波(でんかみつどは、CDW)は、固体におけるエネルギーの低い2つの似通った秩序状態を指す。2つの状態とも、異方的な低次元物質もしくはフェルミエネルギーに高い状態密度を持つ金属において低温でおきる。このような物質でおきる他の低温での基底状態は、超伝導、強磁性、反強磁性である。秩序状態への転移は、凝縮エネルギーによって引き起こされ、その大きさはおよそである。は転移によって開くエネルギーギャップの大きさである。SDWはスピン波とは異なることに注意しなければならない。スピン波は強磁性、反強磁性の励起である。 基本的にSDWとCDWは、周期的な変調をそれぞれ電子のスピンの密度と電荷の密度に生じ、それらは特徴的な空間周波数を持ち、はイオンの位置を表す対称群においては変化しない。CDWによる新たな周期性は、走査型トンネル顕微鏡や電子線回折によって簡単に見ることが出来る。これに比べSDWは見にくく、一般的に中性子回折法や磁化率測定によって見ることができる。もし新たな周期性が格子定数の整数分の1か整数倍の時は、波はコメンシュレートであると言い、そうでない時は、インコメンシュレートであると言う。 (ja)
rdfs:label
  • スピン密度波 (ja)
  • スピン密度波 (ja)
owl:sameAs
prov:wasDerivedFrom
foaf:depiction
foaf:isPrimaryTopicOf
is dbo:wikiPageRedirects of
is dbo:wikiPageWikiLink of
is owl:sameAs of
is foaf:primaryTopic of