クーダハ(古アイルランド語: cumdach /ˈkuṽdax/)は、初期中世アイルランドにおいて、聖人が実際に使ったとされる書物を納めるために用いられた、精巧に装飾された箱のことである。納書箱(英語: book shrine)とも呼ばれる。 普通、納められた書物より数世紀新しいことが多い。典型的には、アイルランドで修道院文化が興隆した800年以前の英雄時代の書物を納めるクーダハは、現存するものでは1000年以降のものである。ただし、クーダハという形自体はもう少し古くからあることが分かっている。正面に水晶や半貴石をあしらった十字架が配置され、その隙間にさまざまな意匠が施されるのが一般的な形式である。鎖や紐が付けられているものもあり、これは運ぶときに首にかけ、本を胸に当てるためのものである。こういった聖遺物を心臓の近くに置くことは、霊的そして医療的な利益があると考えられていた(中世ダーラムの『』の革袋と同じである)。また契約の立会の際にも用いられた。多くは修道院とつながりのあった有力氏族が世襲で管理者を務めたが、現存するものの多くはに収蔵されている。

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  • クーダハ(古アイルランド語: cumdach /ˈkuṽdax/)は、初期中世アイルランドにおいて、聖人が実際に使ったとされる書物を納めるために用いられた、精巧に装飾された箱のことである。納書箱(英語: book shrine)とも呼ばれる。 普通、納められた書物より数世紀新しいことが多い。典型的には、アイルランドで修道院文化が興隆した800年以前の英雄時代の書物を納めるクーダハは、現存するものでは1000年以降のものである。ただし、クーダハという形自体はもう少し古くからあることが分かっている。正面に水晶や半貴石をあしらった十字架が配置され、その隙間にさまざまな意匠が施されるのが一般的な形式である。鎖や紐が付けられているものもあり、これは運ぶときに首にかけ、本を胸に当てるためのものである。こういった聖遺物を心臓の近くに置くことは、霊的そして医療的な利益があると考えられていた(中世ダーラムの『』の革袋と同じである)。また契約の立会の際にも用いられた。多くは修道院とつながりのあった有力氏族が世襲で管理者を務めたが、現存するものの多くはに収蔵されている。 アイルランド外の教会でも、諸聖人の遺骸を始めとする聖遺物は、典型的には家の形をした(chasse)に納める慣習があった(例えばスコットランドのモニマスク聖遺物箱など)。アイルランドでは、諸聖人の遺骸よりも、むしろ彼らが使った(とされる)物品が特に聖遺物として重視された。書物を納めるクーダハのほかにも、ミサで使用される手鐘を納める納鐘箱(bell-shrine)などがアイルランド特有のものとして知られる。未詳の聖人が身につけていたベルトを納めた最初期の聖遺物箱が、スライゴ県モイラクの沼地で発掘されており、これは真実の宣誓や病気の治療などに用いられたと考えられている。 クーダハは、『ケルズの書』の盗まれたカバーのような、その時代で最も偉大な祈祷書に付された貴金属製の豪華装丁とは区別されているが、デザインは非常に似通っている。最も状態の良いの例である『』(ニューヨークのモーガン図書館所蔵)の裏表紙も、中心に大きな十字が配され、その周りをが埋めるという構成になっている。豪華装丁もクーダハも、木製の表紙ないし箱に金銀細工を貼り付けるという点で同一の技術によるものといえる。 (ja)
  • クーダハ(古アイルランド語: cumdach /ˈkuṽdax/)は、初期中世アイルランドにおいて、聖人が実際に使ったとされる書物を納めるために用いられた、精巧に装飾された箱のことである。納書箱(英語: book shrine)とも呼ばれる。 普通、納められた書物より数世紀新しいことが多い。典型的には、アイルランドで修道院文化が興隆した800年以前の英雄時代の書物を納めるクーダハは、現存するものでは1000年以降のものである。ただし、クーダハという形自体はもう少し古くからあることが分かっている。正面に水晶や半貴石をあしらった十字架が配置され、その隙間にさまざまな意匠が施されるのが一般的な形式である。鎖や紐が付けられているものもあり、これは運ぶときに首にかけ、本を胸に当てるためのものである。こういった聖遺物を心臓の近くに置くことは、霊的そして医療的な利益があると考えられていた(中世ダーラムの『』の革袋と同じである)。また契約の立会の際にも用いられた。多くは修道院とつながりのあった有力氏族が世襲で管理者を務めたが、現存するものの多くはに収蔵されている。 アイルランド外の教会でも、諸聖人の遺骸を始めとする聖遺物は、典型的には家の形をした(chasse)に納める慣習があった(例えばスコットランドのモニマスク聖遺物箱など)。アイルランドでは、諸聖人の遺骸よりも、むしろ彼らが使った(とされる)物品が特に聖遺物として重視された。書物を納めるクーダハのほかにも、ミサで使用される手鐘を納める納鐘箱(bell-shrine)などがアイルランド特有のものとして知られる。未詳の聖人が身につけていたベルトを納めた最初期の聖遺物箱が、スライゴ県モイラクの沼地で発掘されており、これは真実の宣誓や病気の治療などに用いられたと考えられている。 クーダハは、『ケルズの書』の盗まれたカバーのような、その時代で最も偉大な祈祷書に付された貴金属製の豪華装丁とは区別されているが、デザインは非常に似通っている。最も状態の良いの例である『』(ニューヨークのモーガン図書館所蔵)の裏表紙も、中心に大きな十字が配され、その周りをが埋めるという構成になっている。豪華装丁もクーダハも、木製の表紙ないし箱に金銀細工を貼り付けるという点で同一の技術によるものといえる。 (ja)
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  • クーダハ(古アイルランド語: cumdach /ˈkuṽdax/)は、初期中世アイルランドにおいて、聖人が実際に使ったとされる書物を納めるために用いられた、精巧に装飾された箱のことである。納書箱(英語: book shrine)とも呼ばれる。 普通、納められた書物より数世紀新しいことが多い。典型的には、アイルランドで修道院文化が興隆した800年以前の英雄時代の書物を納めるクーダハは、現存するものでは1000年以降のものである。ただし、クーダハという形自体はもう少し古くからあることが分かっている。正面に水晶や半貴石をあしらった十字架が配置され、その隙間にさまざまな意匠が施されるのが一般的な形式である。鎖や紐が付けられているものもあり、これは運ぶときに首にかけ、本を胸に当てるためのものである。こういった聖遺物を心臓の近くに置くことは、霊的そして医療的な利益があると考えられていた(中世ダーラムの『』の革袋と同じである)。また契約の立会の際にも用いられた。多くは修道院とつながりのあった有力氏族が世襲で管理者を務めたが、現存するものの多くはに収蔵されている。 (ja)
  • クーダハ(古アイルランド語: cumdach /ˈkuṽdax/)は、初期中世アイルランドにおいて、聖人が実際に使ったとされる書物を納めるために用いられた、精巧に装飾された箱のことである。納書箱(英語: book shrine)とも呼ばれる。 普通、納められた書物より数世紀新しいことが多い。典型的には、アイルランドで修道院文化が興隆した800年以前の英雄時代の書物を納めるクーダハは、現存するものでは1000年以降のものである。ただし、クーダハという形自体はもう少し古くからあることが分かっている。正面に水晶や半貴石をあしらった十字架が配置され、その隙間にさまざまな意匠が施されるのが一般的な形式である。鎖や紐が付けられているものもあり、これは運ぶときに首にかけ、本を胸に当てるためのものである。こういった聖遺物を心臓の近くに置くことは、霊的そして医療的な利益があると考えられていた(中世ダーラムの『』の革袋と同じである)。また契約の立会の際にも用いられた。多くは修道院とつながりのあった有力氏族が世襲で管理者を務めたが、現存するものの多くはに収蔵されている。 (ja)
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  • クーダハ (ja)
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