Ku自己抗原(Ku autoantigen、しばしば「Ku」とのみ表記される)は、DNA二本鎖切断末端に結合する二量体タンパク質複合体であり、DNA修復の非相同末端結合(NHEJ)経路に必須の生体分子である。 Kuは細菌から人間まで広範囲の生物に進化的に保存されている。祖先の細菌Kuはホモ二量体である。真核生物のKuは、Ku70 (XRCC6)とKu80 (XRCC5)という2つのポリペプチドのヘテロ二量体であり、それらの名称の由来はヒトKuサブユニットの分子量がそれぞれ約70kDaと80kDaであるためである。2つのKuサブユニットはどちらも、DNA末端を通すバスケット型の構造を形成している。これらが会合すると、KuはDNA鎖を滑り、より多くのKu分子が末端を通ることができるようにする。高等真核生物では、KuはDNA依存性プロテインキナーゼ触媒サブユニット(DNA-PKcs)と複合体を形成し、完全なDNA依存性プロテインキナーゼであるDNA-PKを形成する。Kuは、NHEJに関与する他のタンパク質が結合できる足場分子として機能し、核酸連結のために二本鎖切断に方向性を与えると考えられている。 Kuの両方のサブユニットについて、マウスで遺伝子をノックアウトする実験が行わている。これらのマウスでは染色体の不安定性が示され、Ku並びにNHEJがゲノムの維持に重要であることを明らかにした。

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  • Ku自己抗原(Ku autoantigen、しばしば「Ku」とのみ表記される)は、DNA二本鎖切断末端に結合する二量体タンパク質複合体であり、DNA修復の非相同末端結合(NHEJ)経路に必須の生体分子である。 Kuは細菌から人間まで広範囲の生物に進化的に保存されている。祖先の細菌Kuはホモ二量体である。真核生物のKuは、Ku70 (XRCC6)とKu80 (XRCC5)という2つのポリペプチドのヘテロ二量体であり、それらの名称の由来はヒトKuサブユニットの分子量がそれぞれ約70kDaと80kDaであるためである。2つのKuサブユニットはどちらも、DNA末端を通すバスケット型の構造を形成している。これらが会合すると、KuはDNA鎖を滑り、より多くのKu分子が末端を通ることができるようにする。高等真核生物では、KuはDNA依存性プロテインキナーゼ触媒サブユニット(DNA-PKcs)と複合体を形成し、完全なDNA依存性プロテインキナーゼであるDNA-PKを形成する。Kuは、NHEJに関与する他のタンパク質が結合できる足場分子として機能し、核酸連結のために二本鎖切断に方向性を与えると考えられている。 Ku70およびKu80タンパク質はどちらも、3つの構造ドメインで構成されている。 N末端ドメインはアルファ/ベータドメインであり、その構造にはロスマンフォールドの6本鎖Βシートが含まれる。このドメインは二量体の界面に小さな寄与を果たす。中央ドメインは、 DNA結合性ベータバレルドメインである。KuはDNAの糖リン酸骨格とわずかに接触するだけでDNA塩基とは接触しないが、二重らせんの主溝と副溝の輪郭に立体的に適合し、二重鎖DNAを囲む閉環を形成する。Kuは、切断された2つのDNA末端の間に架橋を形成することにより構造的に支持および配置させ、末端を分解から保護し、かつ末端による無事なDNA部分への無差別な化学攻撃を防ぐ。Kuは、DNAポリメラーゼ、ヌクレアーゼ、およびリガーゼが損傷DNA末端にアクセスできるようにしながら、DNAを効果的に配置させ、二つの末端間の結合を促進する。C末端アームは、他方のサブユニットの中央ドメインのΒバレルドメインを包含するΑヘリックス領域である。これら3つのドメインのほかに4番目のドメインがC末端に存在する場合もあり、DNA-PKcsに結合する。 Kuの両方のサブユニットについて、マウスで遺伝子をノックアウトする実験が行わている。これらのマウスでは染色体の不安定性が示され、Ku並びにNHEJがゲノムの維持に重要であることを明らかにした。 多くの生物では、KuはDNA修復に加えて、テロメアにおいて役割を持つ。 Ku80の豊富さは、種の寿命の長さに関係しているという研究結果もある。 (ja)
  • Ku自己抗原(Ku autoantigen、しばしば「Ku」とのみ表記される)は、DNA二本鎖切断末端に結合する二量体タンパク質複合体であり、DNA修復の非相同末端結合(NHEJ)経路に必須の生体分子である。 Kuは細菌から人間まで広範囲の生物に進化的に保存されている。祖先の細菌Kuはホモ二量体である。真核生物のKuは、Ku70 (XRCC6)とKu80 (XRCC5)という2つのポリペプチドのヘテロ二量体であり、それらの名称の由来はヒトKuサブユニットの分子量がそれぞれ約70kDaと80kDaであるためである。2つのKuサブユニットはどちらも、DNA末端を通すバスケット型の構造を形成している。これらが会合すると、KuはDNA鎖を滑り、より多くのKu分子が末端を通ることができるようにする。高等真核生物では、KuはDNA依存性プロテインキナーゼ触媒サブユニット(DNA-PKcs)と複合体を形成し、完全なDNA依存性プロテインキナーゼであるDNA-PKを形成する。Kuは、NHEJに関与する他のタンパク質が結合できる足場分子として機能し、核酸連結のために二本鎖切断に方向性を与えると考えられている。 Ku70およびKu80タンパク質はどちらも、3つの構造ドメインで構成されている。 N末端ドメインはアルファ/ベータドメインであり、その構造にはロスマンフォールドの6本鎖Βシートが含まれる。このドメインは二量体の界面に小さな寄与を果たす。中央ドメインは、 DNA結合性ベータバレルドメインである。KuはDNAの糖リン酸骨格とわずかに接触するだけでDNA塩基とは接触しないが、二重らせんの主溝と副溝の輪郭に立体的に適合し、二重鎖DNAを囲む閉環を形成する。Kuは、切断された2つのDNA末端の間に架橋を形成することにより構造的に支持および配置させ、末端を分解から保護し、かつ末端による無事なDNA部分への無差別な化学攻撃を防ぐ。Kuは、DNAポリメラーゼ、ヌクレアーゼ、およびリガーゼが損傷DNA末端にアクセスできるようにしながら、DNAを効果的に配置させ、二つの末端間の結合を促進する。C末端アームは、他方のサブユニットの中央ドメインのΒバレルドメインを包含するΑヘリックス領域である。これら3つのドメインのほかに4番目のドメインがC末端に存在する場合もあり、DNA-PKcsに結合する。 Kuの両方のサブユニットについて、マウスで遺伝子をノックアウトする実験が行わている。これらのマウスでは染色体の不安定性が示され、Ku並びにNHEJがゲノムの維持に重要であることを明らかにした。 多くの生物では、KuはDNA修復に加えて、テロメアにおいて役割を持つ。 Ku80の豊富さは、種の寿命の長さに関係しているという研究結果もある。 (ja)
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  • DNAと結合したヒトKuの結晶構造。Ku70は紫で、Ku80は青で、DNA鎖は緑で表示されている。 (ja)
  • Ku86のC末端領域の溶液構造 (ja)
  • DNAと結合したKuヘテロ二量体のC末端アームの結晶構造 (ja)
  • Kuヘテロ二量体のN末端α/β構造ドメインの結晶構造。赤色はαヘリックス、青色はβシートの二次構造で表示されている。 (ja)
  • DNAと結合したKuヘテロ二量体のβバレルの結晶構造。αヘリックスは赤色、βシートは青色、DNAは紫色で表示されている。 (ja)
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  • Ku自己抗原(Ku autoantigen、しばしば「Ku」とのみ表記される)は、DNA二本鎖切断末端に結合する二量体タンパク質複合体であり、DNA修復の非相同末端結合(NHEJ)経路に必須の生体分子である。 Kuは細菌から人間まで広範囲の生物に進化的に保存されている。祖先の細菌Kuはホモ二量体である。真核生物のKuは、Ku70 (XRCC6)とKu80 (XRCC5)という2つのポリペプチドのヘテロ二量体であり、それらの名称の由来はヒトKuサブユニットの分子量がそれぞれ約70kDaと80kDaであるためである。2つのKuサブユニットはどちらも、DNA末端を通すバスケット型の構造を形成している。これらが会合すると、KuはDNA鎖を滑り、より多くのKu分子が末端を通ることができるようにする。高等真核生物では、KuはDNA依存性プロテインキナーゼ触媒サブユニット(DNA-PKcs)と複合体を形成し、完全なDNA依存性プロテインキナーゼであるDNA-PKを形成する。Kuは、NHEJに関与する他のタンパク質が結合できる足場分子として機能し、核酸連結のために二本鎖切断に方向性を与えると考えられている。 Kuの両方のサブユニットについて、マウスで遺伝子をノックアウトする実験が行わている。これらのマウスでは染色体の不安定性が示され、Ku並びにNHEJがゲノムの維持に重要であることを明らかにした。 (ja)
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  • Ku自己抗原 (ja)
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