『台所太平記』(だいどころたいへいき)は、谷崎潤一郎の長編小説。戦前の1936年(昭和11年)から戦後の1963年(昭和38年)にかけ、家の台所仕事を担っていた歴代の女中たちの変遷の物語。本の文章を読み聞かせるなど一種の徒弟修行の教育的側面もあった彼女らとの主従関係に、『春琴抄』『痴人の愛』などの主題に通底する深層意識も垣間見られる作品で、戦後民主化に伴う封建的な家制度の解体や、失われてゆく存在への共感と哀惜が描かれている。ある階層の女性たちの生活文化史としても読める作品にもなっている。 1962年(昭和37年)10月28日号から1963年(昭和38年)3月10日号まで『サンデー毎日』に連載された。単行本は1963年(昭和38年)4月に中央公論社で刊行された。 同年に豊田四郎監督により映画化され、連続テレビドラマ化もされた。その後もドラマ化が度々行われた。