トカラ文字とは、ブラーフミー文字の一種で、中央アジアのインド・ヨーロッパ語族に属すトカラ語を記すのに用いられた文字。とりわけ、8世紀頃から(あるいは、もっと早く)、ヤシの葉、木版、などに書かれたものが、タリム盆地の極度に乾燥した気候によって保存されている。言語サンプルの出土地点は、クチャ、カシュガルなどで、多くの壁面上の記述を含む。 とは相互に理解可能ではない。正確に言えば、試験的な解釈に依拠する「twqryはTokharoiに関連づく」という説は、本来、トカラ語Aのみがトハラ人に結び付くのであって、トカラ語Bの方は(話者自身の呼び名に従えばkuśiññe)と呼ぶべきである。しかし、学術研究においては、両者の文法は通常一緒に扱われるため、AとBという呼称は都合が良いと考えられている。共通の原トカラ語は、少なくとも数世紀は遡れる言語でなければならないが、恐らくは、紀元前1世紀頃と推定される。また、トカラ語Aは、地理的範囲の狭さと世俗的文書の少なさから、これを典礼言語とし、両者は漢文と現代中国語のような関係性にあったのではないかとも考えられている。しかしながら、トカラ語文書全般の保存状態が断片的であるがために、トカラ語Aの世俗的コーパスが少ないことを断定できるわけではない。