パイエルス転移(パイエルスてんい、英: Peierls transition)とは、金属中の電子・格子系において、格子系の変形と電子系のバンド構造変化が同時に起こる構造相転移のこと。ルドルフ・パイエルスによって提唱された。 温度を下げていくと、ある温度でパイエルス転移が起こる。このとき格子系では変形が起こり、弾性エネルギーが増加する(損をする)。しかし電子系では、電子格子相互作用によりフェルミ面にエネルギーギャップが開き(絶縁体)、その結果として電子系のエネルギーは減少する(得をする)。このとき全体としては、電子系でのエネルギーの得が、格子系のエネルギーの損を上回るためにパイエルス転移が起こる。 低温では格子の周期性に対応した電荷密度波を作る。また格子系の構造変化は、電子系のフェルミ面にできるだけ広範囲にエネルギーギャップを作ろうとする。 パイエルス転移はコーン異常によってフォノンのエネルギーが小さくなった結果起こるとも言える。 逆に温度を上げるとフェルミ面の上にいる電子が増え、電子系のエネルギーの得が小さくなり、ある温度で相転移を起こして電荷密度波は消える。

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  • パイエルス転移(パイエルスてんい、英: Peierls transition)とは、金属中の電子・格子系において、格子系の変形と電子系のバンド構造変化が同時に起こる構造相転移のこと。ルドルフ・パイエルスによって提唱された。 温度を下げていくと、ある温度でパイエルス転移が起こる。このとき格子系では変形が起こり、弾性エネルギーが増加する(損をする)。しかし電子系では、電子格子相互作用によりフェルミ面にエネルギーギャップが開き(絶縁体)、その結果として電子系のエネルギーは減少する(得をする)。このとき全体としては、電子系でのエネルギーの得が、格子系のエネルギーの損を上回るためにパイエルス転移が起こる。 低温では格子の周期性に対応した電荷密度波を作る。また格子系の構造変化は、電子系のフェルミ面にできるだけ広範囲にエネルギーギャップを作ろうとする。 パイエルス転移はコーン異常によってフォノンのエネルギーが小さくなった結果起こるとも言える。 逆に温度を上げるとフェルミ面の上にいる電子が増え、電子系のエネルギーの得が小さくなり、ある温度で相転移を起こして電荷密度波は消える。 パイエルス転移は1次元の有機伝導体などで見られる。2次元・3次元になるとより等方的になり、フェルミ面の全ての場所でエネルギーギャップ生じるような格子変形は存在しないためである。よって電子系でエネルギーを得することが難しくなり、低温にしても電荷密度波は起こりにくくなる。 (ja)
  • パイエルス転移(パイエルスてんい、英: Peierls transition)とは、金属中の電子・格子系において、格子系の変形と電子系のバンド構造変化が同時に起こる構造相転移のこと。ルドルフ・パイエルスによって提唱された。 温度を下げていくと、ある温度でパイエルス転移が起こる。このとき格子系では変形が起こり、弾性エネルギーが増加する(損をする)。しかし電子系では、電子格子相互作用によりフェルミ面にエネルギーギャップが開き(絶縁体)、その結果として電子系のエネルギーは減少する(得をする)。このとき全体としては、電子系でのエネルギーの得が、格子系のエネルギーの損を上回るためにパイエルス転移が起こる。 低温では格子の周期性に対応した電荷密度波を作る。また格子系の構造変化は、電子系のフェルミ面にできるだけ広範囲にエネルギーギャップを作ろうとする。 パイエルス転移はコーン異常によってフォノンのエネルギーが小さくなった結果起こるとも言える。 逆に温度を上げるとフェルミ面の上にいる電子が増え、電子系のエネルギーの得が小さくなり、ある温度で相転移を起こして電荷密度波は消える。 パイエルス転移は1次元の有機伝導体などで見られる。2次元・3次元になるとより等方的になり、フェルミ面の全ての場所でエネルギーギャップ生じるような格子変形は存在しないためである。よって電子系でエネルギーを得することが難しくなり、低温にしても電荷密度波は起こりにくくなる。 (ja)
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  • パイエルス転移(パイエルスてんい、英: Peierls transition)とは、金属中の電子・格子系において、格子系の変形と電子系のバンド構造変化が同時に起こる構造相転移のこと。ルドルフ・パイエルスによって提唱された。 温度を下げていくと、ある温度でパイエルス転移が起こる。このとき格子系では変形が起こり、弾性エネルギーが増加する(損をする)。しかし電子系では、電子格子相互作用によりフェルミ面にエネルギーギャップが開き(絶縁体)、その結果として電子系のエネルギーは減少する(得をする)。このとき全体としては、電子系でのエネルギーの得が、格子系のエネルギーの損を上回るためにパイエルス転移が起こる。 低温では格子の周期性に対応した電荷密度波を作る。また格子系の構造変化は、電子系のフェルミ面にできるだけ広範囲にエネルギーギャップを作ろうとする。 パイエルス転移はコーン異常によってフォノンのエネルギーが小さくなった結果起こるとも言える。 逆に温度を上げるとフェルミ面の上にいる電子が増え、電子系のエネルギーの得が小さくなり、ある温度で相転移を起こして電荷密度波は消える。 (ja)
  • パイエルス転移(パイエルスてんい、英: Peierls transition)とは、金属中の電子・格子系において、格子系の変形と電子系のバンド構造変化が同時に起こる構造相転移のこと。ルドルフ・パイエルスによって提唱された。 温度を下げていくと、ある温度でパイエルス転移が起こる。このとき格子系では変形が起こり、弾性エネルギーが増加する(損をする)。しかし電子系では、電子格子相互作用によりフェルミ面にエネルギーギャップが開き(絶縁体)、その結果として電子系のエネルギーは減少する(得をする)。このとき全体としては、電子系でのエネルギーの得が、格子系のエネルギーの損を上回るためにパイエルス転移が起こる。 低温では格子の周期性に対応した電荷密度波を作る。また格子系の構造変化は、電子系のフェルミ面にできるだけ広範囲にエネルギーギャップを作ろうとする。 パイエルス転移はコーン異常によってフォノンのエネルギーが小さくなった結果起こるとも言える。 逆に温度を上げるとフェルミ面の上にいる電子が増え、電子系のエネルギーの得が小さくなり、ある温度で相転移を起こして電荷密度波は消える。 (ja)
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  • パイエルス転移 (ja)
  • パイエルス転移 (ja)
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