禅(ぜん、Zen)は、仏教用語として「心が動揺することのなくなった状態」を意味する サンスクリット語「ध्यान( dhyāna、ディヤーナ)」の音写である禅那(ぜんな)(=禅定)の略語で、類義語として、三昧(さんまい)や定(じょう)と訳されるサマーディ(巴、梵: samādhi)がある。ただ、中国において、大乗仏教の一宗派として、禅那(ぜんな)に至る真の教えを説くとする禅宗(ぜんしゅう)が確立すると、禅は「禅宗」の略称ともなった。また、禅宗における坐しての瞑想は坐禅と呼ばれ、禅宗における修行の中心とされるが、禅は、この坐禅(座禅)の略語としても用いられる。本項では宗派である禅宗について述べる。 禅宗は南インド出身で中国に渡った達磨僧(ボーディダルマ)を祖とし、坐禅(座禅)を基本的な修行形態とする。ただし、坐禅そのものは古くから仏教の基本的実践の重要な徳目であり、坐禅を中心に行う仏教集団が「禅宗」と呼称され始めたのは、中国の唐代末期からである。こうして宗派として確立されると、その起源を求める声が高まり、遡って初祖とされたのが達磨である。それ故、歴史上の達磨による、直接的な著作は存在が認められていない。伝承上の達磨のもたらしたとする禅は、部派仏教における禅とは異なり、了義大乗の禅である。 近年では、禅の修行方法を取り入れた更生教育や社員教育などに力を入れている寺院が目立つ。