通奏低音(つうそうていおん)とは、主にバロック音楽において行われる伴奏の形態。一般に楽譜上では低音部の旋律のみが示され、奏者はそれに適切な和音を付けて演奏する。イタリア語のバッソ・コンティヌオ (Basso continuo) の訳語で、伴奏楽器が間断なく演奏し続けるということからこの名がある。略してコンティヌオと呼ぶことも多い。ドイツ語でゲネラルバス (Generalbass) とも呼ばれる。 記譜された音から和音をつくることをリアライズという。演奏されるべき和音の構成音を指示するために、記譜音からの音程を示す数字や変化記号を音符に添えることが一般的であり、これを数字付き低音という。現代では専門家でない演奏者のためにリアリゼーションを楽譜に書き起こしたものも多く市販されている。 このような通奏低音という形態は、バロック音楽の根幹をなす要素であり、バロック時代を指して「通奏低音の時代」と称することがある。また、ポピュラー音楽における「コードネーム」の概念にも通じる原理がある。 日本では通奏低音という語は「常に底流としてある、考えや主張のたとえ」などを指す言葉として音楽以外の分野で比喩的に用いられることがあるが、おそらくこのような用法は低音を持続すること(ドローン)や執拗低音(オスティナート・バス)と混同された結果の誤用であろうと考えられる。