貿易風(ぼうえきふう、英語: trade winds)は、熱帯域で定常的に吹く西向きの卓越風のこと。他に熱帯東風(ねったいとうふう)や恒風(こうふう)、古くは恒信風(こうしんふう)と呼ばれた。単に偏東風(へんとうふう、英語: easterlies)と呼ばれることもあるが(大気大循環論)、極地でおこる恒常的な東風(極東風)も同様に呼ばれるため、これと分けるために熱帯偏東風と呼ばれることもある。 南北半球の低緯度帯(約0~30度)には、ハドレー循環と呼ばれる大気の流れが生じており、この現象と、地球の自転によって生じるコリオリの力を受けて地表部で起こる空気の流れが貿易風と呼ばれるものである。一般に恒常的な東風と説明されるが、それぞれ極側から赤道帯に向かう風の流れもあり、正しくは北半球では北東の風、南半球では南東の風となり、それぞれ北東貿易風、南東貿易風とも呼ばれる。 近代以前の帆船の時代において、風の流れを掴むことは重要であり、特に貿易風は15世紀に始まる大航海時代においてヨーロッパの列強諸国にその重要性を認識された。貿易風と偏西風によって、ヨーロッパは大西洋を横断してアメリカ大陸と行き来きすることが可能となり、植民地を拡大させることが可能となった。また、ヨーロッパから、真南にあたるアフリカ南部に向かう際にも、いったん外海に出て西に進んでから向かうという航法が確立された。

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  • 貿易風(ぼうえきふう、英語: trade winds)は、熱帯域で定常的に吹く西向きの卓越風のこと。他に熱帯東風(ねったいとうふう)や恒風(こうふう)、古くは恒信風(こうしんふう)と呼ばれた。単に偏東風(へんとうふう、英語: easterlies)と呼ばれることもあるが(大気大循環論)、極地でおこる恒常的な東風(極東風)も同様に呼ばれるため、これと分けるために熱帯偏東風と呼ばれることもある。 南北半球の低緯度帯(約0~30度)には、ハドレー循環と呼ばれる大気の流れが生じており、この現象と、地球の自転によって生じるコリオリの力を受けて地表部で起こる空気の流れが貿易風と呼ばれるものである。一般に恒常的な東風と説明されるが、それぞれ極側から赤道帯に向かう風の流れもあり、正しくは北半球では北東の風、南半球では南東の風となり、それぞれ北東貿易風、南東貿易風とも呼ばれる。 近代以前の帆船の時代において、風の流れを掴むことは重要であり、特に貿易風は15世紀に始まる大航海時代においてヨーロッパの列強諸国にその重要性を認識された。貿易風と偏西風によって、ヨーロッパは大西洋を横断してアメリカ大陸と行き来きすることが可能となり、植民地を拡大させることが可能となった。また、ヨーロッパから、真南にあたるアフリカ南部に向かう際にも、いったん外海に出て西に進んでから向かうという航法が確立された。 気象学においては、大西洋、太平洋、インド洋南部で発生し、北米、東南アジア、マダガスカル、東アフリカに上陸する熱帯性暴風雨を起こす雲を貿易風は運んでいる。貿易風の発生域においては亜熱帯高圧帯から下降する空気によって生じる貿易風逆転によって雲の高層化が抑えられ、浅い積乱雲が見られる。貿易風が弱まると、その近辺の陸上でより多くの降雨が見られるようになる。 大西洋における貿易風は、硝酸塩やリン酸塩に富むサハラ砂漠の砂塵を中南米に運ぶ役割も持っている。これはアマゾンの土壌に好影響を与える一方、大気中の微粒子が増えることで大気環境に悪影響を及ぼす側面もある。特に1970年代以降、アフリカの旱魃によって砂塵の量が増し、カリブやフロリダのサンゴ礁に悪影響を与えていることが知られている。 (ja)
  • 貿易風(ぼうえきふう、英語: trade winds)は、熱帯域で定常的に吹く西向きの卓越風のこと。他に熱帯東風(ねったいとうふう)や恒風(こうふう)、古くは恒信風(こうしんふう)と呼ばれた。単に偏東風(へんとうふう、英語: easterlies)と呼ばれることもあるが(大気大循環論)、極地でおこる恒常的な東風(極東風)も同様に呼ばれるため、これと分けるために熱帯偏東風と呼ばれることもある。 南北半球の低緯度帯(約0~30度)には、ハドレー循環と呼ばれる大気の流れが生じており、この現象と、地球の自転によって生じるコリオリの力を受けて地表部で起こる空気の流れが貿易風と呼ばれるものである。一般に恒常的な東風と説明されるが、それぞれ極側から赤道帯に向かう風の流れもあり、正しくは北半球では北東の風、南半球では南東の風となり、それぞれ北東貿易風、南東貿易風とも呼ばれる。 近代以前の帆船の時代において、風の流れを掴むことは重要であり、特に貿易風は15世紀に始まる大航海時代においてヨーロッパの列強諸国にその重要性を認識された。貿易風と偏西風によって、ヨーロッパは大西洋を横断してアメリカ大陸と行き来きすることが可能となり、植民地を拡大させることが可能となった。また、ヨーロッパから、真南にあたるアフリカ南部に向かう際にも、いったん外海に出て西に進んでから向かうという航法が確立された。 気象学においては、大西洋、太平洋、インド洋南部で発生し、北米、東南アジア、マダガスカル、東アフリカに上陸する熱帯性暴風雨を起こす雲を貿易風は運んでいる。貿易風の発生域においては亜熱帯高圧帯から下降する空気によって生じる貿易風逆転によって雲の高層化が抑えられ、浅い積乱雲が見られる。貿易風が弱まると、その近辺の陸上でより多くの降雨が見られるようになる。 大西洋における貿易風は、硝酸塩やリン酸塩に富むサハラ砂漠の砂塵を中南米に運ぶ役割も持っている。これはアマゾンの土壌に好影響を与える一方、大気中の微粒子が増えることで大気環境に悪影響を及ぼす側面もある。特に1970年代以降、アフリカの旱魃によって砂塵の量が増し、カリブやフロリダのサンゴ礁に悪影響を与えていることが知られている。 (ja)
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  • 貿易風(ぼうえきふう、英語: trade winds)は、熱帯域で定常的に吹く西向きの卓越風のこと。他に熱帯東風(ねったいとうふう)や恒風(こうふう)、古くは恒信風(こうしんふう)と呼ばれた。単に偏東風(へんとうふう、英語: easterlies)と呼ばれることもあるが(大気大循環論)、極地でおこる恒常的な東風(極東風)も同様に呼ばれるため、これと分けるために熱帯偏東風と呼ばれることもある。 南北半球の低緯度帯(約0~30度)には、ハドレー循環と呼ばれる大気の流れが生じており、この現象と、地球の自転によって生じるコリオリの力を受けて地表部で起こる空気の流れが貿易風と呼ばれるものである。一般に恒常的な東風と説明されるが、それぞれ極側から赤道帯に向かう風の流れもあり、正しくは北半球では北東の風、南半球では南東の風となり、それぞれ北東貿易風、南東貿易風とも呼ばれる。 近代以前の帆船の時代において、風の流れを掴むことは重要であり、特に貿易風は15世紀に始まる大航海時代においてヨーロッパの列強諸国にその重要性を認識された。貿易風と偏西風によって、ヨーロッパは大西洋を横断してアメリカ大陸と行き来きすることが可能となり、植民地を拡大させることが可能となった。また、ヨーロッパから、真南にあたるアフリカ南部に向かう際にも、いったん外海に出て西に進んでから向かうという航法が確立された。 (ja)
  • 貿易風(ぼうえきふう、英語: trade winds)は、熱帯域で定常的に吹く西向きの卓越風のこと。他に熱帯東風(ねったいとうふう)や恒風(こうふう)、古くは恒信風(こうしんふう)と呼ばれた。単に偏東風(へんとうふう、英語: easterlies)と呼ばれることもあるが(大気大循環論)、極地でおこる恒常的な東風(極東風)も同様に呼ばれるため、これと分けるために熱帯偏東風と呼ばれることもある。 南北半球の低緯度帯(約0~30度)には、ハドレー循環と呼ばれる大気の流れが生じており、この現象と、地球の自転によって生じるコリオリの力を受けて地表部で起こる空気の流れが貿易風と呼ばれるものである。一般に恒常的な東風と説明されるが、それぞれ極側から赤道帯に向かう風の流れもあり、正しくは北半球では北東の風、南半球では南東の風となり、それぞれ北東貿易風、南東貿易風とも呼ばれる。 近代以前の帆船の時代において、風の流れを掴むことは重要であり、特に貿易風は15世紀に始まる大航海時代においてヨーロッパの列強諸国にその重要性を認識された。貿易風と偏西風によって、ヨーロッパは大西洋を横断してアメリカ大陸と行き来きすることが可能となり、植民地を拡大させることが可能となった。また、ヨーロッパから、真南にあたるアフリカ南部に向かう際にも、いったん外海に出て西に進んでから向かうという航法が確立された。 (ja)
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  • 貿易風 (ja)
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