『文鏡秘府論』(ぶんきょうひふろん)は、平安時代前期に編纂された文学理論書で、中国の六朝期から唐朝に至る詩文の創作理論を取りまとめたものである。唐代中期の長安に留学した空海が、帰国後に日本の弘仁年間(810年 - 823年)に完成させたとされる。全六巻。 取り上げられている諸家の評論の取捨選択に空海の主観が入っているとはいえ、そこに引用されている文章はすべて唐土の文人のものであり、彼自身が執筆したことが確実であるのは、各巻に見える序文のみである。空海は、本書に関しては「著者」ではなく、編者の位置にあると言える。