『恩讐の彼方に』(おんしゅうのかなたに)は、大正8年(1919年)1月に発表された菊池寛の短編小説である。初出は『中央公論』1919年1月号。翌1920年(大正9年)、菊池自身の手によって『敵討以上』(かたきうちいじょう)として戯曲化されている(3幕、初出『人間』1920年4月)。このほか、1932年(昭和7年)には『恩讐の彼方に』と『敵討以上』を組み合わせて改作した短編小説『青洞門物語』(『冨士』1932年1月号)も発表されている。 江戸時代後期に、豊前国(大分県)の山国川沿いの耶馬渓にあった交通の難所に、青の洞門を開削した実在の僧である禅海の史実に取材した作品。しかし禅海は、小説の主人公である市九郎(了海)のようにこれを独力で掘り続けたわけではなく、托鉢勧進によって掘削の資金を集め、石工たちを雇って掘った。また敵討ちの話も菊池による創作である。