『吉野葛』(よしのくず)は、谷崎潤一郎の中編小説。「その一 自天王」「その二 妹背山」「その三 初音の鼓」「その四 狐噲」「その五 国栖」「その六 入の波」の全6章から成る。後南朝を題材とする歴史小説をかねて構想していた「私」が、秋の吉野で案内役の友人から打ち明けられた母恋の身の上話に惹かれていく物語。 1931年(昭和6年)、雑誌『中央公論』1月号と2月号に連載された。初収録は、1932年(昭和7年)2月に中央公論社より刊行の『』。その後、1937年(昭和12年)12月に「潤一郎六部集」の一冊として創元社より単行本化された。