数学、特に線型代数学におけるベクトル空間(ベクトルくうかん、英: vector space)、または、線型空間(せんけいくうかん、英: linear space)は、ベクトル(英: vector)と呼ばれる元からなる集まりの成す数学的構造である。 ベクトルにはが定義され、またスカラーと呼ばれる数による積(スカラー乗法)を行える。スカラーは実数とすることも多いが、複素数や有理数あるいは一般の体の元によるスカラー乗法を持つベクトル空間もある。ベクトルの和とスカラー乗法の演算は、「ベクトル空間の公理」と呼ばれる特定の条件()を満足するものでなければならない。ベクトル空間の一つの例は、力のような物理量を表現するのに用いられる幾何ベクトルの全体である(同じ種類の任意の二つの力は、加え合わせて力の合成と呼ばれる第三の力のベクトルを与える。また、力のベクトルを実数倍したものはまた別の力のベクトルを表す)。同じ調子で、平面や空間での変位を表すベクトルの全体もやはりベクトル空間を成す。 ベクトル空間の概念は様々な方法で一般化され、幾何学や抽象代数学のより進んだ概念が導かれる。