プロトン核磁気共鳴 (プロトンかくじききょうめい、英: Proton nuclear magnetic resonance)あるいはプロトンNMR、水素1 NMR、1H NMRとは、核磁気共鳴分光法の1種で、分子中の水素1の原子核が起こす核磁気共鳴を測定し、その分子の構造を決定する手法である。天然の水素 (H) が含まれるサンプルでは、水素の同位体のうちほぼ全てが1H(水素1:原子核にプロトン1個のみを含む同位体)である。1Hの原子全体は軽水素と呼ばれる。 単純なNMRのスペクトルは溶液の状態で測定されるため、溶媒のプロトンのデータが入り込むことは許されない。したがってNMR測定に使う溶媒は重水素 (2H、Dと表記することが多い) (重溶媒)を使うことが望ましい。この例として重水 (D2O)、 ((CD3)2CO)、 (CD3OD)、((CD3)2SO)、重水素化クロロホルム (CDCl3) などが挙げられる。また水素原子を含まない溶媒である四塩化炭素 (CCl4)、二硫化炭素 (CS2) などが使用されることもある。 多くの有機化合物に対するプロトンNMRのスペクトルの化学シフトは+14 ppm〜−4 ppmの間にあり、化合物は化学シフトとプロトン間のスピン-スピン結合によって特性づけられる。それぞれのプロトンの積分曲線は個々のプロトン数を反映している。

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  • プロトン核磁気共鳴 (プロトンかくじききょうめい、英: Proton nuclear magnetic resonance)あるいはプロトンNMR、水素1 NMR、1H NMRとは、核磁気共鳴分光法の1種で、分子中の水素1の原子核が起こす核磁気共鳴を測定し、その分子の構造を決定する手法である。天然の水素 (H) が含まれるサンプルでは、水素の同位体のうちほぼ全てが1H(水素1:原子核にプロトン1個のみを含む同位体)である。1Hの原子全体は軽水素と呼ばれる。 単純なNMRのスペクトルは溶液の状態で測定されるため、溶媒のプロトンのデータが入り込むことは許されない。したがってNMR測定に使う溶媒は重水素 (2H、Dと表記することが多い) (重溶媒)を使うことが望ましい。この例として重水 (D2O)、 ((CD3)2CO)、 (CD3OD)、((CD3)2SO)、重水素化クロロホルム (CDCl3) などが挙げられる。また水素原子を含まない溶媒である四塩化炭素 (CCl4)、二硫化炭素 (CS2) などが使用されることもある。 歴史的に見れば、分析するプロトンの化学シフトを較正するためのとして少量(多くは0.1%程度)のテトラメチルシラン (TMS) を含んだ重溶媒が供給されてきた。TMSは四面体形分子であり、全てのプロトンは化学的に等価であるから、NMRを測定すると1本のシグナルしか示さず、これを化学シフト0 ppmとして定義することができた。TMSはであるため、サンプルを回収しやすい。しかし現在の分光器は測定溶媒に残存するプロトン(例えば99.99% CDCl3は0.01%のCHCl3を含む)をスペクトルの基準とすることができる。 重溶媒を使うと、NMRの磁場の自然なドリフトの影響を相殺するために重水素周波数-磁場固定(deuterium frequency-field lock、重水素固定あるいは磁場固定とも)を使うことができる。重水素固定を機能させるためには、NMRが溶媒の重水素からの信号の共鳴周波数を常に検知し、共鳴周波数を一定に保つためにを変化させる必要がある。さらに、ロックされる溶媒の共鳴周波数ならびにロック溶媒と0 ppm(TMS)との差はよく知られているため、重水素シグナルから0 ppmを正確に定義することができる。 多くの有機化合物に対するプロトンNMRのスペクトルの化学シフトは+14 ppm〜−4 ppmの間にあり、化合物は化学シフトとプロトン間のスピン-スピン結合によって特性づけられる。それぞれのプロトンの積分曲線は個々のプロトン数を反映している。 単純な分子のスペクトルは単純になる。クロロエタンのスペクトルは1.5 ppmに三重線、3.5 ppmに比が3:2の四重線を持つ。ベンゼンのスペクトルは環電流のため7.2 ppmにピークが1本だけ検出される。 炭素13核磁気共鳴と合わせてプロトンNMRは構造決定によく用いられる。 (ja)
  • プロトン核磁気共鳴 (プロトンかくじききょうめい、英: Proton nuclear magnetic resonance)あるいはプロトンNMR、水素1 NMR、1H NMRとは、核磁気共鳴分光法の1種で、分子中の水素1の原子核が起こす核磁気共鳴を測定し、その分子の構造を決定する手法である。天然の水素 (H) が含まれるサンプルでは、水素の同位体のうちほぼ全てが1H(水素1:原子核にプロトン1個のみを含む同位体)である。1Hの原子全体は軽水素と呼ばれる。 単純なNMRのスペクトルは溶液の状態で測定されるため、溶媒のプロトンのデータが入り込むことは許されない。したがってNMR測定に使う溶媒は重水素 (2H、Dと表記することが多い) (重溶媒)を使うことが望ましい。この例として重水 (D2O)、 ((CD3)2CO)、 (CD3OD)、((CD3)2SO)、重水素化クロロホルム (CDCl3) などが挙げられる。また水素原子を含まない溶媒である四塩化炭素 (CCl4)、二硫化炭素 (CS2) などが使用されることもある。 歴史的に見れば、分析するプロトンの化学シフトを較正するためのとして少量(多くは0.1%程度)のテトラメチルシラン (TMS) を含んだ重溶媒が供給されてきた。TMSは四面体形分子であり、全てのプロトンは化学的に等価であるから、NMRを測定すると1本のシグナルしか示さず、これを化学シフト0 ppmとして定義することができた。TMSはであるため、サンプルを回収しやすい。しかし現在の分光器は測定溶媒に残存するプロトン(例えば99.99% CDCl3は0.01%のCHCl3を含む)をスペクトルの基準とすることができる。 重溶媒を使うと、NMRの磁場の自然なドリフトの影響を相殺するために重水素周波数-磁場固定(deuterium frequency-field lock、重水素固定あるいは磁場固定とも)を使うことができる。重水素固定を機能させるためには、NMRが溶媒の重水素からの信号の共鳴周波数を常に検知し、共鳴周波数を一定に保つためにを変化させる必要がある。さらに、ロックされる溶媒の共鳴周波数ならびにロック溶媒と0 ppm(TMS)との差はよく知られているため、重水素シグナルから0 ppmを正確に定義することができる。 多くの有機化合物に対するプロトンNMRのスペクトルの化学シフトは+14 ppm〜−4 ppmの間にあり、化合物は化学シフトとプロトン間のスピン-スピン結合によって特性づけられる。それぞれのプロトンの積分曲線は個々のプロトン数を反映している。 単純な分子のスペクトルは単純になる。クロロエタンのスペクトルは1.5 ppmに三重線、3.5 ppmに比が3:2の四重線を持つ。ベンゼンのスペクトルは環電流のため7.2 ppmにピークが1本だけ検出される。 炭素13核磁気共鳴と合わせてプロトンNMRは構造決定によく用いられる。 (ja)
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  • プロトン核磁気共鳴 (プロトンかくじききょうめい、英: Proton nuclear magnetic resonance)あるいはプロトンNMR、水素1 NMR、1H NMRとは、核磁気共鳴分光法の1種で、分子中の水素1の原子核が起こす核磁気共鳴を測定し、その分子の構造を決定する手法である。天然の水素 (H) が含まれるサンプルでは、水素の同位体のうちほぼ全てが1H(水素1:原子核にプロトン1個のみを含む同位体)である。1Hの原子全体は軽水素と呼ばれる。 単純なNMRのスペクトルは溶液の状態で測定されるため、溶媒のプロトンのデータが入り込むことは許されない。したがってNMR測定に使う溶媒は重水素 (2H、Dと表記することが多い) (重溶媒)を使うことが望ましい。この例として重水 (D2O)、 ((CD3)2CO)、 (CD3OD)、((CD3)2SO)、重水素化クロロホルム (CDCl3) などが挙げられる。また水素原子を含まない溶媒である四塩化炭素 (CCl4)、二硫化炭素 (CS2) などが使用されることもある。 多くの有機化合物に対するプロトンNMRのスペクトルの化学シフトは+14 ppm〜−4 ppmの間にあり、化合物は化学シフトとプロトン間のスピン-スピン結合によって特性づけられる。それぞれのプロトンの積分曲線は個々のプロトン数を反映している。 (ja)
  • プロトン核磁気共鳴 (プロトンかくじききょうめい、英: Proton nuclear magnetic resonance)あるいはプロトンNMR、水素1 NMR、1H NMRとは、核磁気共鳴分光法の1種で、分子中の水素1の原子核が起こす核磁気共鳴を測定し、その分子の構造を決定する手法である。天然の水素 (H) が含まれるサンプルでは、水素の同位体のうちほぼ全てが1H(水素1:原子核にプロトン1個のみを含む同位体)である。1Hの原子全体は軽水素と呼ばれる。 単純なNMRのスペクトルは溶液の状態で測定されるため、溶媒のプロトンのデータが入り込むことは許されない。したがってNMR測定に使う溶媒は重水素 (2H、Dと表記することが多い) (重溶媒)を使うことが望ましい。この例として重水 (D2O)、 ((CD3)2CO)、 (CD3OD)、((CD3)2SO)、重水素化クロロホルム (CDCl3) などが挙げられる。また水素原子を含まない溶媒である四塩化炭素 (CCl4)、二硫化炭素 (CS2) などが使用されることもある。 多くの有機化合物に対するプロトンNMRのスペクトルの化学シフトは+14 ppm〜−4 ppmの間にあり、化合物は化学シフトとプロトン間のスピン-スピン結合によって特性づけられる。それぞれのプロトンの積分曲線は個々のプロトン数を反映している。 (ja)
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  • プロトン核磁気共鳴 (ja)
  • プロトン核磁気共鳴 (ja)
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