パロディ・モンタージュ写真事件 (パロディ・モンタージュしゃしんじけん)とは、山岳写真家・白川義員の写真作品の一部が、フォトモンタージュ技法を用いてグラフィックデザイナーのマッド・アマノ(本名:天野正之。以下アマノと記す)によって無断合成されたことに端を発する日本の民事訴訟事件である。アマノは自動車公害を風刺する目的でモンタージュ (合成) 写真を創作しており、著作権法上の剽窃 (盗用の意、著作財産権侵害の一つ)、および著作者人格権侵害に該当するかが問われた。特に第一次上告審での1980年 (昭和55年) 最高裁判決は、著作権法上の引用の2要件「明瞭区別性」と「主従関係」(付従性)を具体的に示したことから 2要件説 とも呼ばれ、著作権法のリーディングケースとしてたびたび参照されている。 なお、本件は 旧著作権法 (明治32年3月4日法律第39号) が適用されて法廷で審理された。ただし 現行著作権法 (昭和45年5月6日法律第48号) の施行後に判決が下されていることから、本項では対比のために旧著作権法を「旧○条」、それに対応する現行著作権法を「現○条」と表記して、以下解説する。

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  • パロディ・モンタージュ写真事件 (パロディ・モンタージュしゃしんじけん)とは、山岳写真家・白川義員の写真作品の一部が、フォトモンタージュ技法を用いてグラフィックデザイナーのマッド・アマノ(本名:天野正之。以下アマノと記す)によって無断合成されたことに端を発する日本の民事訴訟事件である。アマノは自動車公害を風刺する目的でモンタージュ (合成) 写真を創作しており、著作権法上の剽窃 (盗用の意、著作財産権侵害の一つ)、および著作者人格権侵害に該当するかが問われた。特に第一次上告審での1980年 (昭和55年) 最高裁判決は、著作権法上の引用の2要件「明瞭区別性」と「主従関係」(付従性)を具体的に示したことから 2要件説 とも呼ばれ、著作権法のリーディングケースとしてたびたび参照されている。 1971年 (昭和46年) に白川が提訴すると、その後は最高裁によって権利侵害が認められて控訴裁に2度差し戻され、最終的に提訴から16年後の1987年に当事者間で和解が成立した。アマノ側は訴訟中、モンタージュ写真が自身の思想・感情を投映した新たな創作物であり、剽窃ではなく著作権法で認められている合法的な引用の範囲だと抗弁した。しかしこのモンタージュ写真は、原著作物である白川の雪山写真の本質的な特徴をそのまま感得できることから、パロディや風刺目的であるか否かを問わず権利侵害であると最高裁で示された。したがってパロディと著作権問題を直接扱った判例とは言えないにもかかわらず、本件以降、日本ではパロディを通じた表現の自由が法的に狭められた、パロディの息の根が止められたなどの見解が散見され、日本の写真史にも名を残すこととなった。 なお、本件は 旧著作権法 (明治32年3月4日法律第39号) が適用されて法廷で審理された。ただし 現行著作権法 (昭和45年5月6日法律第48号) の施行後に判決が下されていることから、本項では対比のために旧著作権法を「旧○条」、それに対応する現行著作権法を「現○条」と表記して、以下解説する。 (ja)
  • パロディ・モンタージュ写真事件 (パロディ・モンタージュしゃしんじけん)とは、山岳写真家・白川義員の写真作品の一部が、フォトモンタージュ技法を用いてグラフィックデザイナーのマッド・アマノ(本名:天野正之。以下アマノと記す)によって無断合成されたことに端を発する日本の民事訴訟事件である。アマノは自動車公害を風刺する目的でモンタージュ (合成) 写真を創作しており、著作権法上の剽窃 (盗用の意、著作財産権侵害の一つ)、および著作者人格権侵害に該当するかが問われた。特に第一次上告審での1980年 (昭和55年) 最高裁判決は、著作権法上の引用の2要件「明瞭区別性」と「主従関係」(付従性)を具体的に示したことから 2要件説 とも呼ばれ、著作権法のリーディングケースとしてたびたび参照されている。 1971年 (昭和46年) に白川が提訴すると、その後は最高裁によって権利侵害が認められて控訴裁に2度差し戻され、最終的に提訴から16年後の1987年に当事者間で和解が成立した。アマノ側は訴訟中、モンタージュ写真が自身の思想・感情を投映した新たな創作物であり、剽窃ではなく著作権法で認められている合法的な引用の範囲だと抗弁した。しかしこのモンタージュ写真は、原著作物である白川の雪山写真の本質的な特徴をそのまま感得できることから、パロディや風刺目的であるか否かを問わず権利侵害であると最高裁で示された。したがってパロディと著作権問題を直接扱った判例とは言えないにもかかわらず、本件以降、日本ではパロディを通じた表現の自由が法的に狭められた、パロディの息の根が止められたなどの見解が散見され、日本の写真史にも名を残すこととなった。 なお、本件は 旧著作権法 (明治32年3月4日法律第39号) が適用されて法廷で審理された。ただし 現行著作権法 (昭和45年5月6日法律第48号) の施行後に判決が下されていることから、本項では対比のために旧著作権法を「旧○条」、それに対応する現行著作権法を「現○条」と表記して、以下解説する。 (ja)
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  • 第二 自己の著作物中に正当の範囲内に於て節録引用すること (ja)
  • 現32条〔引用〕 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。 (ja)
  • 本条の場合に於ては其の出所を明示することを要す (ja)
  • 旧30条〔著作権の制限〕 既に発行したる著作物を左の方法に依り複製するは偽作と看做さず (ja)
  • 第一... (ja)
  • 第九... (ja)
  • 第二 自己の著作物中に正当の範囲内に於て節録引用すること (ja)
  • 現32条〔引用〕 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。 (ja)
  • 本条の場合に於ては其の出所を明示することを要す (ja)
  • 旧30条〔著作権の制限〕 既に発行したる著作物を左の方法に依り複製するは偽作と看做さず (ja)
  • 第一... (ja)
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  • (ja)
  • 適法引用を規定した著作権法の条文新旧比較 (ja)
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prop-ja:事件名
  • 損害賠償 (ja)
  • 損害賠償 (ja)
prop-ja:事件番号
  • 昭和51年(オ)第923号 (ja)
  • 昭和58年(オ)第516号 (ja)
  • 昭和51年(オ)第923号 (ja)
  • 昭和58年(オ)第516号 (ja)
prop-ja:判例集
  • 民集34巻3号244頁 (ja)
  • 民集40巻4号725頁 (ja)
  • 民集34巻3号244頁 (ja)
  • 民集40巻4号725頁 (ja)
prop-ja:参照法条
  • 旧著作権法18条、29条、36条の2、および民訴法186条、224条1項 (ja)
  • 旧著作権法18条、30条1項2号、36条ノ2 (ja)
  • 旧著作権法18条、29条、36条の2、および民訴法186条、224条1項 (ja)
  • 旧著作権法18条、30条1項2号、36条ノ2 (ja)
prop-ja:反対意見
  • なし (ja)
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prop-ja:多数意見
  • 全員一致 (ja)
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prop-ja:意見
  • なし (ja)
  • 要旨2. につき環から補足意見あり (ja)
  • なし (ja)
  • 要旨2. につき環から補足意見あり (ja)
prop-ja:法廷名
  • 第三小法廷 (ja)
  • 第二小法廷 (ja)
  • 第三小法廷 (ja)
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prop-ja:裁判年月日
  • 0001-03-28 (xsd:gMonthDay)
  • 0001-05-30 (xsd:gMonthDay)
prop-ja:裁判要旨
  • # 旧著作権法30条1項2号の「節録引用」とは紹介、参照、論評などを目的とし、 明瞭区別性および 主従関係 を満たす必要がある。 # 原著作物の本質的な特徴を直接感得することができることから、著作者人格権侵害に当たる。 # 一部風景を除去し、タイヤ画像を合成して白黒化する行為は、著作者人格権侵害に当たる。 (ja)
  • # 著作財産権と著作者人格権の侵害が併合されて慰謝料請求された場合、両者を切り分けて金額算出する必要がある。 # 名誉回復措置請求権 は、社会的名誉のみを対象とする。主観的な名誉感情の毀損は謝罪広告掲載の対象外である。 (ja)
  • # 旧著作権法30条1項2号の「節録引用」とは紹介、参照、論評などを目的とし、 明瞭区別性および 主従関係 を満たす必要がある。 # 原著作物の本質的な特徴を直接感得することができることから、著作者人格権侵害に当たる。 # 一部風景を除去し、タイヤ画像を合成して白黒化する行為は、著作者人格権侵害に当たる。 (ja)
  • # 著作財産権と著作者人格権の侵害が併合されて慰謝料請求された場合、両者を切り分けて金額算出する必要がある。 # 名誉回復措置請求権 は、社会的名誉のみを対象とする。主観的な名誉感情の毀損は謝罪広告掲載の対象外である。 (ja)
prop-ja:裁判長
  • 環昌一 (ja)
  • 藤島昭 (ja)
  • 環昌一 (ja)
  • 藤島昭 (ja)
prop-ja:陪席裁判官
  • 大橋進 牧圭次 島谷六郎 香川保一 (ja)
  • 江里口清雄、横井大三 (ja)
  • 大橋進 牧圭次 島谷六郎 香川保一 (ja)
  • 江里口清雄、横井大三 (ja)
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  • パロディ・モンタージュ写真事件 (パロディ・モンタージュしゃしんじけん)とは、山岳写真家・白川義員の写真作品の一部が、フォトモンタージュ技法を用いてグラフィックデザイナーのマッド・アマノ(本名:天野正之。以下アマノと記す)によって無断合成されたことに端を発する日本の民事訴訟事件である。アマノは自動車公害を風刺する目的でモンタージュ (合成) 写真を創作しており、著作権法上の剽窃 (盗用の意、著作財産権侵害の一つ)、および著作者人格権侵害に該当するかが問われた。特に第一次上告審での1980年 (昭和55年) 最高裁判決は、著作権法上の引用の2要件「明瞭区別性」と「主従関係」(付従性)を具体的に示したことから 2要件説 とも呼ばれ、著作権法のリーディングケースとしてたびたび参照されている。 なお、本件は 旧著作権法 (明治32年3月4日法律第39号) が適用されて法廷で審理された。ただし 現行著作権法 (昭和45年5月6日法律第48号) の施行後に判決が下されていることから、本項では対比のために旧著作権法を「旧○条」、それに対応する現行著作権法を「現○条」と表記して、以下解説する。 (ja)
  • パロディ・モンタージュ写真事件 (パロディ・モンタージュしゃしんじけん)とは、山岳写真家・白川義員の写真作品の一部が、フォトモンタージュ技法を用いてグラフィックデザイナーのマッド・アマノ(本名:天野正之。以下アマノと記す)によって無断合成されたことに端を発する日本の民事訴訟事件である。アマノは自動車公害を風刺する目的でモンタージュ (合成) 写真を創作しており、著作権法上の剽窃 (盗用の意、著作財産権侵害の一つ)、および著作者人格権侵害に該当するかが問われた。特に第一次上告審での1980年 (昭和55年) 最高裁判決は、著作権法上の引用の2要件「明瞭区別性」と「主従関係」(付従性)を具体的に示したことから 2要件説 とも呼ばれ、著作権法のリーディングケースとしてたびたび参照されている。 なお、本件は 旧著作権法 (明治32年3月4日法律第39号) が適用されて法廷で審理された。ただし 現行著作権法 (昭和45年5月6日法律第48号) の施行後に判決が下されていることから、本項では対比のために旧著作権法を「旧○条」、それに対応する現行著作権法を「現○条」と表記して、以下解説する。 (ja)
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  • パロディ・モンタージュ写真事件 (ja)
  • パロディ・モンタージュ写真事件 (ja)
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