ケトンの不斉還元(英語:Enantioselective ketone reductions)とは、プロキラルなケトンを、キラルで、かつ、ラセミ体でないアルコールに変換する方法である。 ケトンの炭素はsp2混成軌道であるため、平面的で不斉中心になり得ない。これに対してアルコールの官能基である水酸基が結合した炭素はsp3混成軌道を取り得るため、この炭素に水酸基とは異なる3種類の置換基が結合した場合、不斉中心になり得る。もしケトンに対し、単純に水素を付加してアルコールにすると、アルコールに不斉中心ができる場合には、ケトンが持つ平面のどちら側から水素が付加するかを制御していないために、半々の確率で立体配置の異なるアルコールが生成するから、生成物はラセミ体になってしまう。立体配置が異なっていても多くの物理的化学的性質は同じであるために、ラセミ体から片方の立体配置のアルコールだけを取り出すことは難しい。この問題を解決して、欲しい立体配置のアルコールだけを得るための手法が、ケトンの不斉還元である。