S5G はアメリカ海軍の艦艇向け発電・推進用原子炉である。 型式名のS5Gは以下のような意味である。 * S = 潜水艦用 * 5 = 設計担当メーカにおける炉心設計の世代 * G = 設計担当メーカ(ゼネラル・エレクトリック) S5Gは2ループの冷却系と2基の蒸気発生器を備える加圧水型原子炉であった。一次冷却材が自然循環して炉心水位が維持されるよう、原子炉格納容器を下に、蒸気発生器を上に置く構成での設計が求められた。 S5Gは陸上設置型の原型炉と、艦載する実用炉の両方が建造された。原型炉はアイダホ州アルコ近郊のアイダホ国立研究所アメリカ海軍原子炉施設に、実用炉はUSS ナーワル (SSN-671)に設置された。自然循環が潜水艦の静粛化に利用できるかのテストが目的であった。 原子炉の一次冷却材ポンプは潜水艦において一番のノイズ源であり、冷却材ポンプおよびその関連機器を取り除くことで推進系の機械的な複雑さと必要なスペースを減らすことも期待できた。 S5G 原型炉は1995年5月に完全に停止された。

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  • S5G はアメリカ海軍の艦艇向け発電・推進用原子炉である。 型式名のS5Gは以下のような意味である。 * S = 潜水艦用 * 5 = 設計担当メーカにおける炉心設計の世代 * G = 設計担当メーカ(ゼネラル・エレクトリック) S5Gは2ループの冷却系と2基の蒸気発生器を備える加圧水型原子炉であった。一次冷却材が自然循環して炉心水位が維持されるよう、原子炉格納容器を下に、蒸気発生器を上に置く構成での設計が求められた。 S5Gは陸上設置型の原型炉と、艦載する実用炉の両方が建造された。原型炉はアイダホ州アルコ近郊のアイダホ国立研究所アメリカ海軍原子炉施設に、実用炉はUSS ナーワル (SSN-671)に設置された。自然循環が潜水艦の静粛化に利用できるかのテストが目的であった。 原子炉の一次冷却材ポンプは潜水艦において一番のノイズ源であり、冷却材ポンプおよびその関連機器を取り除くことで推進系の機械的な複雑さと必要なスペースを減らすことも期待できた。 S5Gでも一次冷却材ポンプは設置されていたが、高速航行時以外は必要なかった。また、炉心は冷却材がスムーズに流れるよう設計されていたため、冷却材ポンプはS5Wのものより小型で静かであり、数も少なく済んだ。航行中はほとんど冷却材ポンプを動かさずに済んだ。この設計により船体径を大きくすることができたが、S5Wに比べて太い一次冷却系配管が必要だった。このため、S5Gはその後の攻撃型原潜に採用されることはなかったが、より大型のオハイオ級原子力潜水艦に搭載されたS8Gの設計の前身となった。 機関部からのノイズをさらに減らすため、通常の2基の蒸気タービンで減速機を介して2基のスクリューを駆動する構成から、大きな1基の蒸気タービンで直接スクリューを駆動する構成に変更された。これによって主減速機からのノイズは排除できたが、代償としてタービンが巨大なものになってしまった。タービンで直接スクリューを駆動し、かつスクリューの推進効率を高めるにはタービンを低速で回転させる必要があったため、タービンの大きさは直径 約12ft(3.7m)、全長 約30ft(9.1m)にもなったのである。この機関部は、ナーワルだけでなく陸上の原型炉にも同じものが用意された。 自然循環のコンセプトは海軍が設計を始めた当時は比較的新しいものであった。このため、原型炉は海軍での使用に堪えるか確認するために極めて厳しい試験が行われた。設計は大きな成功を収めたものの、ナーワル以降の攻撃型原潜で標準的な設計となることはなかった。原型炉のテストには、「原子炉区画を巨大なプールに浮かべ、巨大なジャイロスコープで長軸方向にトルク付加することで急旋回を模擬する」といった攻撃型原潜の機関部として本質的に必要な性能の確認も含まれていた。これは、冷却材の循環を重力に頼る自然循環が、様々な角度での機動や急旋回においても機能するかを見極めるためであった。 S5G 原型炉は1995年5月に完全に停止された。 (ja)
  • S5G はアメリカ海軍の艦艇向け発電・推進用原子炉である。 型式名のS5Gは以下のような意味である。 * S = 潜水艦用 * 5 = 設計担当メーカにおける炉心設計の世代 * G = 設計担当メーカ(ゼネラル・エレクトリック) S5Gは2ループの冷却系と2基の蒸気発生器を備える加圧水型原子炉であった。一次冷却材が自然循環して炉心水位が維持されるよう、原子炉格納容器を下に、蒸気発生器を上に置く構成での設計が求められた。 S5Gは陸上設置型の原型炉と、艦載する実用炉の両方が建造された。原型炉はアイダホ州アルコ近郊のアイダホ国立研究所アメリカ海軍原子炉施設に、実用炉はUSS ナーワル (SSN-671)に設置された。自然循環が潜水艦の静粛化に利用できるかのテストが目的であった。 原子炉の一次冷却材ポンプは潜水艦において一番のノイズ源であり、冷却材ポンプおよびその関連機器を取り除くことで推進系の機械的な複雑さと必要なスペースを減らすことも期待できた。 S5Gでも一次冷却材ポンプは設置されていたが、高速航行時以外は必要なかった。また、炉心は冷却材がスムーズに流れるよう設計されていたため、冷却材ポンプはS5Wのものより小型で静かであり、数も少なく済んだ。航行中はほとんど冷却材ポンプを動かさずに済んだ。この設計により船体径を大きくすることができたが、S5Wに比べて太い一次冷却系配管が必要だった。このため、S5Gはその後の攻撃型原潜に採用されることはなかったが、より大型のオハイオ級原子力潜水艦に搭載されたS8Gの設計の前身となった。 機関部からのノイズをさらに減らすため、通常の2基の蒸気タービンで減速機を介して2基のスクリューを駆動する構成から、大きな1基の蒸気タービンで直接スクリューを駆動する構成に変更された。これによって主減速機からのノイズは排除できたが、代償としてタービンが巨大なものになってしまった。タービンで直接スクリューを駆動し、かつスクリューの推進効率を高めるにはタービンを低速で回転させる必要があったため、タービンの大きさは直径 約12ft(3.7m)、全長 約30ft(9.1m)にもなったのである。この機関部は、ナーワルだけでなく陸上の原型炉にも同じものが用意された。 自然循環のコンセプトは海軍が設計を始めた当時は比較的新しいものであった。このため、原型炉は海軍での使用に堪えるか確認するために極めて厳しい試験が行われた。設計は大きな成功を収めたものの、ナーワル以降の攻撃型原潜で標準的な設計となることはなかった。原型炉のテストには、「原子炉区画を巨大なプールに浮かべ、巨大なジャイロスコープで長軸方向にトルク付加することで急旋回を模擬する」といった攻撃型原潜の機関部として本質的に必要な性能の確認も含まれていた。これは、冷却材の循環を重力に頼る自然循環が、様々な角度での機動や急旋回においても機能するかを見極めるためであった。 S5G 原型炉は1995年5月に完全に停止された。 (ja)
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  • S5G はアメリカ海軍の艦艇向け発電・推進用原子炉である。 型式名のS5Gは以下のような意味である。 * S = 潜水艦用 * 5 = 設計担当メーカにおける炉心設計の世代 * G = 設計担当メーカ(ゼネラル・エレクトリック) S5Gは2ループの冷却系と2基の蒸気発生器を備える加圧水型原子炉であった。一次冷却材が自然循環して炉心水位が維持されるよう、原子炉格納容器を下に、蒸気発生器を上に置く構成での設計が求められた。 S5Gは陸上設置型の原型炉と、艦載する実用炉の両方が建造された。原型炉はアイダホ州アルコ近郊のアイダホ国立研究所アメリカ海軍原子炉施設に、実用炉はUSS ナーワル (SSN-671)に設置された。自然循環が潜水艦の静粛化に利用できるかのテストが目的であった。 原子炉の一次冷却材ポンプは潜水艦において一番のノイズ源であり、冷却材ポンプおよびその関連機器を取り除くことで推進系の機械的な複雑さと必要なスペースを減らすことも期待できた。 S5G 原型炉は1995年5月に完全に停止された。 (ja)
  • S5G はアメリカ海軍の艦艇向け発電・推進用原子炉である。 型式名のS5Gは以下のような意味である。 * S = 潜水艦用 * 5 = 設計担当メーカにおける炉心設計の世代 * G = 設計担当メーカ(ゼネラル・エレクトリック) S5Gは2ループの冷却系と2基の蒸気発生器を備える加圧水型原子炉であった。一次冷却材が自然循環して炉心水位が維持されるよう、原子炉格納容器を下に、蒸気発生器を上に置く構成での設計が求められた。 S5Gは陸上設置型の原型炉と、艦載する実用炉の両方が建造された。原型炉はアイダホ州アルコ近郊のアイダホ国立研究所アメリカ海軍原子炉施設に、実用炉はUSS ナーワル (SSN-671)に設置された。自然循環が潜水艦の静粛化に利用できるかのテストが目的であった。 原子炉の一次冷却材ポンプは潜水艦において一番のノイズ源であり、冷却材ポンプおよびその関連機器を取り除くことで推進系の機械的な複雑さと必要なスペースを減らすことも期待できた。 S5G 原型炉は1995年5月に完全に停止された。 (ja)
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  • S5G (原子炉) (ja)
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