伊藤 初代(いとう はつよ、1906年(明治39年)9月16日 - 1951年(昭和26年)2月27日)は、川端康成の元婚約者。15歳の時に22歳の川端と婚約し、その1か月後に突然婚約破棄を告げた女性である。その事件による失意が川端の生涯の転機となり、様々な作品に深い影響を与えたことで知られる。川端の永遠に満たされることのなかった青春の幼い愛は、清潔な少女への夢や、聖処女の面影への憧憬を残し、孤児の生い立ちの克服という命題と融合しながら独自の基盤をなして、川端文学の形成に寄与した。伊藤初代との事件を直接題材にした作品群は、発表当時は刊行本収録されず、川端の数え年50歳を記念した全集に初収録され、川端自身が「あとがき」において当時の日記(実名部分は仮名でみち子)を交えて半生を振り返りながら、そのモデルの存在について初めて具体的に詳らかにした。それ以降、その事件と川端文学との関連が論者の間で考慮され始め、川端のノーベル文学賞受賞以後は、より詳細な研究が進み、「伊藤初代」の実名や家族関係などが明らかとなり、川端没後は、さらに新たな事実関係や周辺人物の実名・地名が解明された。2014年(平成26年)には、川端が初代に宛てた未投函の書簡1通と、初代から川端に宛てた書簡10通が川端の旧宅から発見され、川端が小説内で引用した文面との関連が確認された。また同年、初代の遺族の証言により、謎であった婚約破棄通告の真相の一端が事実であった可能性が明らかとなり、川端研究再考の一助となった。
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